富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥が発端となったイギリスの郵便局をめぐる冤罪事件で、富士通はイギリス政府の調査に対して、会計システムの稼働直後から欠陥を把握していたことを認め謝罪。
1999年から富士通が納入した会計システムによって会計記録と郵便局の残高が一致しなくなったことから、横領や詐欺の疑いで700人あまりが刑事訴追されたそうです。
会計システムに欠陥が見つかったことを受けて現在、有罪判決の破棄などが進んでいるそうですが、ホライゾンのバグの原因・内容は?
富士通 ホライゾン・イギリス郵便局のバグの原因・内容は?
富士通の会計システムの欠陥が発端となったイギリスの郵便局をめぐる冤罪事件で、元郵便局長の男性がJNNの取材に応じ、「当局にシステムの不具合を報告しても無視された」と、当時の状況を語りました。
この事件は、イギリスの郵便局で利用されていた会計システムの欠陥が発端となり、郵便局長ら700人以上が窃盗などの罪で不当に訴追されたものです。
富士通 パターソン執行役員
https://news.yahoo.co.jp/articles/19ff420c77dea369658125e0c59058dca7cda190
「(1999年に)システムが導入された当初から、バグやエラー、欠陥があり、(富士通の)関係者は皆、認識していた」
イギリスの郵便局をめぐり700人以上の郵便局長らが窃盗などの罪で不当に訴追されたえん罪事件で、富士通の幹部が会計システムに導入当初から欠陥があったことを、富士通の関係者が認識していたと証言しています。
富士通 ポール・パターソン執行役員は「(1999年に)システムが導入された当初から29のバグやエラー、欠陥があり、(富士通の)関係者は皆、認識。“こうした事実を郵便局の運営会社に知らせていた”と述べています。
その1つは、郵便局の運営者が最初に被害に遭ったスコットランドの村にちなんで「ダルメリントンバグ」と名付けられたもので、ユーザーが現金の受け取りを確認しようとしているときに画面がフリーズするというものでした。ユーザーがフリーズした画面で「Enter」を押すたびに、黙ってレコードが更新されます。
ダルメリントン・バグにより 24,000 ポンドの不一致が生じ、郵便局は当時、郵便局運営者の責任を追及することになりました。
こうしたシステム開発では、不具合(バグ)は何百件も出るのが普通ですし、リソースも限られているので、すべての不具合を検出できる訳でも全てを対応できる訳でもありません
システムフリーズ中の複数同一トランザクションというテストフェースで想定しずらい現象で重大な結果を惹起するという最悪のケースとなってしまったとは推測はできます
カレンダースクエアバグと呼ばれる別のバグ(これも影響を受けたことが判明した最初の支店にちなんで名付けられました)では、システムを支えるデータベースのエラーにより重複した取引が作成されました。明らかな重複であるにもかかわらず、郵便局オペレーターが再び責任を問われました。
ICL買収|富士通ホライゾン・イギリス郵便局のバグ発生の背景・経緯
ホライゾンは富士通が独自に開発したシステムではなく1990年に富士通が買収した英ICL(現富士通サービシーズ)が開発し、保守・運用も担ってきた。
International Computers Limited(ICL)社は英国、特に官庁向けにシステムを納入していたコンピューター会社で買収後の一つの事業として英国郵便局向け勘定系システム「ホライズン」の開発を進めます。
ホライゾンは、CとVisual Basic、Oracle Database、Riposteで構築され、当初は2000年からイギリスのポスト・オフィスで運用されました。
しかし、このシステム導入後、窓口の現金が会計システム上の残高よりも少なくなる事態が頻発しました。これにより、ポスト・オフィスは郵便局長に対し、現金の差額を責任者として補填するよう求めました。そして、この問題に絡んで2015年までに700人以上の郵便局長が横領や不正経理の罪で起訴され、中には刑務所に入れられたり、自殺したりする者も出ました。
裁判を通じて明らかになったのは、ホライゾンの欠陥により窓口の現金とシステム上の残高に不整合が生じていたことでした。多くの郵便局長が無実の罪を負い、これが「英国史上最大の冤罪事件」と指摘されました。
ポスト・オフィスは2019年に郵便局長たちとの和解金として5800万ポンド(約110億円)を支払いましたが、有罪判決の取り消しや賠償には時間がかかっており、被害者の怒りが収まっていない状況です。この問題はテレビドラマでも取り上げられ、英国政府も大きく取り上げ、補償を進める考えを示しています。
この事件は、富士通とイギリス政府の関係に微妙な影響を与えました。富士通は他にも英国政府との契約で一部トラブルがあり、官庁業務の優先落札企業リストから外れるなど、感情論も影響しているようです。ホライゾンは元々、富士通が買収したICLが開発したシステムであり、その導入には多くの困難が伴っていました。
富士通ホライゾン(イギリス郵便局EPOSシステム)とは?
富士通ホライゾン(イギリス郵便局EPOSシステム)は、イギリスの郵便局で利用されている会計システムです。1999年に富士通のイギリスの子会社である富士通サービス(現・富士通コミュニケーションズ・サービス)が開発し、イギリス国内の郵便局に導入されました。
このシステムは、郵便局の窓口で政府などからの給付金の受け取り、提携する銀行の口座からの預け入れや引き出し、郵便切手の販売、郵便物の発送などの業務を支援しています。
なお、アップデートされた富士通ホライゾンは、今もイギリス国内の郵便局で利用されている唯一の会計システムであり、毎日約600万件の取引を処理しています。
イギリスと富士通の契約は2024年まで延長されていますが、富士通のITシステムはポスト・オフィス以外にも、英政府の中枢で採用されているからかもしれません。
まとめ:富士通 ホライゾン・イギリス郵便局のバグの原因・内容は?
イギリスの郵便局に富士通の会計システム「ホライゾン」が導入されたのは、1999年のことでした。ホライゾンは、郵便局の窓口で政府などからの給付金の受け取り、提携する銀行の口座からの預け入れや引き出し、郵便切手の販売、郵便物の発送などの業務を支援するシステムです。
ホライゾンの導入当初から、郵便局長から不具合や原因不明のエラーが報告されていました。しかし、ポスト・オフィス(イギリスの郵便局)側は、システムの非を認めず、郵便局長側に責任を負わせました。
その結果、窓口の現金とシステム上の残高に不整合が生じた場合には、郵便局長が横領などの罪で起訴されるという事態が相次ぎました。
2015年までに、700人以上の郵便局長が逮捕され、そのうち500人以上が有罪判決を受けました。中には、刑務所に入れられたり、自殺したりした人もいました。
バグの原因
ホライゾンのバグの原因は、主に以下の2つと考えられています。
■システムの複雑さ
ホライゾンは、イギリス郵便局の全業務を網羅する大規模なシステムです。そのため、システムの複雑さからバグの発生リスクが高かったと考えられます。
■テストの不十分さ
ホライゾンは、導入前に十分なテストが行われなかったと考えられます。そのため、バグが潜在的に存在したまま導入され、運用中に問題が顕在化したと考えられます。
被害者への賠償
2019年、ポスト・オフィスは、被害者への賠償として、合計5800万ポンド(約110億円)の和解金を支払うことで、郵便局長側と合意しました。
しかし、その後も有罪判決の取り消しや賠償に時間がかかっていることから、被害者の怒りは収まっていない状況です。