十字ギツネ(ジュウジギツネ)は、日本では北海道に生息する珍しいキツネの一種。キツネの中でもひときわ警戒心が強いことからあまり遭遇することがないものの、
アイヌの伝承では昔から「人に危機の到来を告げる神」と崇められていたようです。
ただ十字ギツネの歴史には毛皮として利用されていた悲しい過去もありました。
十字ギツネ(ジュウジギツネ)とは?特徴は?
キタキツネといえばふつうは赤茶色(きつね色)の毛色をしていますが、真っ黒だったり、濃いグレーだったりする変異色はギンギツネと呼ばれます。
十字ギツネはギンギツネの一種とされているようで、別名「三毛狐」と呼ばれることもあれば、
アイヌでは昔から黒いキツネのことを「シトゥンペカムイ」と呼んでいたそうです。
知里幸恵のアイヌ神謡集にも「国の岬神の岬の上を見守る黒狐の神様」という一節があるとおり
アイヌの伝承では「人に危機の到来を告げる神」と神聖な存在として崇められていました。
十字ギツネ(ジュウジギツネ)の名前の由来は?
十字ギツネという名前の由来は英語の「Cross Fox」の直訳だと思われます。
毛皮を剥いで床にベタっと敷いたときに、首から尾の付け根までの背筋に沿ったラインと、肩から両脇にかけてに黒毛が筋になって生えているラインが、
ちょうど十字に見えることから「十字ギツネ」という名前が付けられたとみられます。
ただ実際には毛色の個体差が激しく、黒毛の部分やその周りの毛色は濃さや広さは千差万別で、十字ギツネを見て十字がハッキリ見えるわけではありません。
ちなみに、養狐場で養殖されていた十字ギツネに関しては栄養状態が良勝ったことから毛並みが良くなり十字模様が薄らいでいたようです。
十字ギツネ(ジュウジギツネ)の生息数・生息地は?
森林総合研究所北海道支所によると、ユーラシア大陸でも分布しているが生息数は非常に少ない珍しいキツネ。
他にも十字ギツネでは北米の北部地域で比較的一般的であり、カナダのアカギツネの個体数の最大30%が十字ギツネのようです。
かつてはアメリカのアイダホ州とユタ州に豊富に生息していたようですが、現在は大部分が絶滅したとされています。
十字ギツネと毛皮の悲しい歴史
昭和初期に内田清之助らが編纂した応用動物図鑑には、大正4年(1915年)からサハリン、北海道、青森で養狐場が次々に建てられたという記録が残されています。
このときにカナダ産の個体が多く利用され、黒色や銀色、十字模様の十字ギツネも含まれていました。
日本ではより綺麗な十文字を出すために、赤いキタキツネと十字ギツネの交雑も行われるようになり、
その影響で十字ギツネにも真っ黒な個体もあればキタキツネのような明るい色の部分が多い個体など様々な種類が見られるようになります。
ただ毛皮が売れなくなり、養狐場が衰退するに伴い養殖されていたキツネたちは山に放されると、
野生にかえって交配を繰り返し、さらに十字ギツネの毛色には多くのバリエーションが生まれたようです。
十字ギツネは「北きつね牧場」で会える!
十字ギツネと野生で遭遇するのはかなり難易度が高いものの、実はきた十字ギツネと野生で遭遇するのはかなり難易度が高いものの、北海道ならではの観光地「キタキツネ牧場」で放し飼いのキタキツネに出会うことができます。
北きつね牧場では十字ギツネのテン君も飼育されているので、ここに行けば、時間や手間もをかける必要はなさそうです。