大牟田市を中心に全国に広まりつつある「徘徊模擬訓練」を始めたのが、
大谷るみ子さん(大牟田市認知症ライフサポート研究会代表)
以前にもプロフェッショナル仕事の流儀に出演し、
大谷るみ子の姿を見て介護の仕事に興味を持った人がたくさんいますが、
「その人らしさを見つめて 認知症ケアのプロSP」の回で大谷るみ子が再登場しました。
大谷るみ子(プロフェッショナル)wikiプロフィールは?
大谷るみ子さんは1957年生まれなので2019年で62歳を迎えるわけですね。
大谷るみ子さんの現在の役職は、
- 大牟田市認知症ライフサポート研究会代表
- 厚労省ライフサポートモデル研究事業ワーキンググループ委員(2011年~)
- はやめ南人情ネットワーク世話人(2005年~)
- 社会福祉法人東翔会 グループホーム”ふぁみりえ”ホーム長(2001年~)
といった感じですが、もともとは病院で働く一人の看護師にすぎませんでした。
大谷るみ子さんが看護師を目指したのも何か目的意識があったわけではなく、
「女性であっても自立して生活できる力をつけるべきだ」という母親から強くすすめられていたから。
高校卒業後の進路として「手に職をつけなくちゃいけない」という
現実的な理由で看護学校を選んだことが、大谷るみ子が医療しいては介護を
志す一歩となりました。
大谷るみ子さんが33歳になる1990年に、
地域密着型医療を目指す現在の医療法人東翔会からの誘いを受け、
東原整形外科病院看護部長に就任。
1994年には特別養護老人ホーム”たいめい苑”看護・介護部長に就任し、
終末期医療・福祉についてさらに深く学ぶため、1996年にデンマーク日欧文化交流学院に留学。
帰国後は、1999年に東原整形外科病院看護部長に就任すると、
認知症の人が少人数で暮らすグループホーム「グループホーム”ふぁみりえ”」ホーム長に抜擢され、
福岡県大牟田市で本格的に認知症と地域をテーマに認知症の人の支援を続ける業務に携わることになります。
大谷るみ子さんのキャリアを大きく変えたのはデンマーク留学を決意したときと言えるでしょう。
人生の最期の時を迎えようとしている患者さんを
病院で医師や看護師が取り囲み、心肺蘇生などの治療を試みる光景に、
大谷るみ子さんは常々、違和感を感じていたそうです。
最期の時が近づいているのなら患者さんはむしろ、
家族に囲まれて過ごすことを望むんでいるのではという考え方を持っていて、
医療行為が優先され家族は臨終まで病室に入れない状況が
どうしても受け入れがたいものがあったようです。
大谷るみ子さんの人生を変えたの本「病院で死ぬということ」山崎章郎
大谷るみ子さんにデンマーク留学を決意した背景には、
「病院で死ぬということ」という本との出会いがあります。
この本の著作である山崎章郎さんという医師も、
終末期医療についてはかねてから疑問を感じていたようです。
もともと外科医として勤務していたものの、
1983年に勤めていた病院から長期休暇を取って
なんと南極の地質調査船の船医になったという異色の経歴の持ち主。
この南極までの長い航海の間に洋上でE・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』を読み、
「人生の終わりには、鎮痛剤よりブドウ酒、輸血より家のスープのほうが患者にははるかにうれしい。」
という一節に感銘を受けたそうです。
かねてから病院の延命治療に疑問を持っていた山崎章郎さんも
ホスピスケアに目覚める末期がんの患者さんとの向き合い方を学ぶようになります。
終末期の患者さんと接する際には「嘘はつかずに、でも側にいてさしあげなければ」と考えるようになったそうです。
大谷るみ子さんの徘徊模擬訓練活動
大谷るみ子さんといえば、徘徊模擬訓練活動の第一人者としても知られていますね。
人口12万3千人の大牟田市が日本の10年後の未来と言われるほど
高齢化率は31・1%と驚くような高さ。
認知症の患者数も相対的に見て全国的に多いのかもしれません。
大谷るみ子さんは身近な小学校校区の公民館や民生委員などのつながりや地域資源活用して、
認知症患者が徘徊することがあっても無事に家やホームに帰宅できるシステム作りに
10年以上の歳月を費やしています。
最初は、大谷るみ子さんのグループホームがある校区の
「はやめ人情ネットワーク」で一つの小学校区をモデルにスタート。
実際に認知症役の人に市内を徘徊してもらい、警察や小中学校、消防、タクシー会社、コンビニ、郵便局などなど
地域の様々なサポーターに認知症のお年寄りがいなくなったという情報を伝え、
みんなでそれらしきお年寄りに声をかける訓練をしたのが始まり。
小中学生の通報で保護された徘徊者も出てくるという成果を上げ、
現在も毎年9月に小学校の校区単位で実施し、2千人規模の参加者が厚ンるように。
※2015年に「徘徊」という言葉を使うのをやめているそうです。
大谷るみ子さんは徘徊模擬訓練活動の一環で、
子どもたちにも認知症を学んでもらうため、大牟田市の認知症の方々のエピソードを収めた
「いつだって心は生きている」という絵本を制作。
市内の小中学校の授業で使用されていて、
絵本の読み聞かせを実施した小中学校のうち約7割が
模擬徘徊訓練などに参加するようになっているそうです。