2014年4月に韓国で起きた大型旅客船「セウォル号」の沈没事故では乗員・乗客あわせて476人中299人が犠牲者となる海難事故となりました。
セウォル号沈没事故で生存者の高校卒業式に犠牲者の親がメッセージ
セウォル号沈没事故の犠牲者は乗員・乗客の他にも捜索作業にあたった韓国海軍兵、民間ダイバー、消防隊員あわせて8人も命を落としています。
172人の乗員・乗客が生存者として救出されましたが、生き残った83人の京畿道安山市(アンサンシ)檀園(ダンウォン)高校の生徒たちが迎えた卒業式に、犠牲者の遺族がお祝いメッセージを発表しました。
下記は、韓国語の原文を日本語訳にしたものです。
卒業式の際に416家族協議会から祝辞を送れるか問い合わせしたそうですが、「生存者の父兄が『やらないほうが』と言っている」という理由で拒否されたため、フェイスブックで祝辞を送ることになったそうです。
引用:https://www.huffingtonpost.jp/2016/01/12/sewol-disaster-parents-message_n_8965768.html
「何て言っていいか分かりません。自分の子の卒業式に父母として出席すると思っていたのに、それが当然と思っていたのに。20歳になったときに我が子の姿を見て、満足さと不安が入り交じる平凡な父母だと思っていたのに、卒業式がとてもうらやましい父母になってしまいました。
でも私たちはいつからか、今日卒業する83人の皆さんが、我が子のように育ってくれることを願うようになりました。
皆さんは、我が子の夢を分かち合っていた友達だから。
皆さんは、我が子の最後の瞬間をともにした友達だから。
みなさんは、我が子のことを、父母よりも長く覚えていてくれる友達だから。
あれから637日、とても寂しく苦しい道を歩んできてくれてありがとう。
本当に苦しかったでしょう。たくさん泣いたでしょう。
大人たちが起こした事故の片隅で、自力で脱出したことが罪なのかと、この社会がみなさんにしたことを、私たち父母はみんなきちんと覚えています。今後もひるまないでください。自分を責めることもしないでください。みなさんのせいではないこと、よく分かっているでしょう。
これからみなさんに待ち受ける困難も多いことでしょう。行く先々で聞かれることでしょう。特別扱いしようとする人もいるでしょう。いつでも、どこでも、堂々と明るく自信を持ってください。星になった250人の友達と12人の先生が、いつでも皆さんを見守っていますから。
星になった友達と先生が、みなさんの重荷となり、忘れたい記憶でないことを願っています。
星になった友達と先生は、皆さんを応援して力をくれる天使の友達、天使の先生です。
星になった友達のかわりに、もっと頑張って生きようと思う必要もありません。ただみなさんが夢見る人生に最善を尽くして、堂々と生きてください。みなさんの人生の中に、星になった友達と先生は明るく笑っていますから。
みなさんにお願いしたいことが一つだけあります。
私たちのように、愚かで馬鹿な大人にはならないでください。絶対に。
みなさんは私たちのように、子供を亡くしてからようやく、何が間違いだったのか気づくような大人になってはいけません。絶対に。
我が子を見つめる心情で、これから皆さんが進む道を応援します。
そして皆さんが経験したあのこと、皆さんの友達が亡くなったあの出来事の真実を必ず見つけ出します。たまには皆さんも私たち父母を応援して下さい。
みなさんの卒業を本当に、本当にお祝いします。
星になった子供たち、先生と、父母たちとともに。
2016年1月12日
416家族協議会犠牲生徒・教師の父母たち」
セウォル号沈没事故の映画は犠牲者家族のドキュメンタリー
セウォル号沈没事故は映画「君の誕生日」にもなっています。
悲劇の連鎖から立ち直ることができないでいる遺族の悲しみと再生の物語となっています。
■あらすじ
2014年4月16日――この世を先に去った息子、スホへの恋しさを抱きながら生きるジョンイルとスンナム。やがて、1年にたった1日だけのスホの誕生日が近づいてくる。母スンナムは主役不在の誕生日は息子がいない現実を認めるようで怖くてたまらない。一方、ある事情により息子が亡くなった日に父親としての役目を果たせなかった父ジョンイルは、家族に対して罪悪感を抱えたまま、あの日から2年後に韓国に戻ってくる。彼にとってすべてが見慣れない現実の中、家族と一緒にスホの誕生日を迎えるが……。