「お召し上がりください」という表現を日常生活でも、文書の中でも目にすることが少なくありませんが、正しい敬語なんでしょうか?二重敬語で間違い?
「お召し上がりください」の正しい敬語は「召し上がってください」「いただいてください」?
お召し上がりくださいの敬語は間違い?召し上がってください?
「いただく」は「食べる」の謙譲語、「召し上がる」は「食べる」の尊敬語です。
謙譲語は自分がへりくだって、間接的に相手を上げる表現です。
尊敬語は直接相手の行動を、尊敬をこめて表す表現です。
「いただいてください」は、明らかに変な日本語です。
正しくは「召し上がってください」です。
「ください」は丁寧語ではなく、「くれ」の尊敬語「くださる」の命令形ですので、尊敬語に変わりはありません。
「召す」は、「飲む」「食べる」意の尊敬語ですが、他にも「着る・招く」など広い意味がありますが、それと区別するため、「飲む」「食う」の尊敬語としては「召し上がる」が使われます。
同じく、「お召し上がりください」も、「お~ください」というのが敬語表現になることから二重敬語となり、これも敬語としては間違った表現とみなされます。
ただ世間一般的に許容されている形という意味では、「お召し上がりください」も「召し上がってください」も、どちらも間違いとは言い切れない所もあります。
最も一般的と思われる文化庁による「敬語の指針」では次のように解説されています。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/keigo_tosin.pdf================引用開始
(2) 「二重敬語」とその適否
一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例えば「お読みになられる」は「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で,更に尊敬語の「……れる」を加えたもので,二重敬語である。
「二重敬語」は,一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣として定着しているものもある。
【習慣として定着している二重敬語の例】
・(尊敬語)お召し上がりになる,お見えになる
・(謙譲語I)お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる
(3) 「敬語連結」とその適否
二つ(以上)の語をそれぞれ敬語にして,接続助詞「て」でつなげたものは,上で言う「二重敬語」ではない。このようなものを,ここでは「敬語連結」と呼ぶことにする。例えば,「お読みになっていらっしゃる」は,「読んでいる」の「読む」を「お読みになる」に,「いる」を「いらっしゃる」にしてつなげたものである。つまり,「読む」「いる」という二つの語をそれぞれ別々に敬語(この場合は尊敬語)にしてつなげたものなので,「二重敬語」には当たらず,「敬語連結」に当たる。
「敬語連結」は,多少の冗長感が生じる場合もあるが,個々の敬語の使い方が適切であり,かつ敬語同士の結び付きに意味的な不合理がない限りは,基本的に許容されるものである。
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「お召し上がりください」は、尊敬語の「召し上がる」を「お?ください」の形にした二重敬語です。
ただし、「敬語の指針」では「召し上がる」を「お?になる」の形にした「お召し上がりになる」を「習慣として定着している」形として許容しています。
ここから類推すると、「お召し上がりください」も「習慣として定着している」形と考えてよいでしょう。
ここで考え方は2つに分かれます。
1)あくまで許容なので使わない
いくら許容されていても二重敬語なので「お召し上がりください」は使うべきではない……と考えるなら、「召し上がってください」あたりを使うのが無難でしょう。
2)「召し上がってください」では敬度不足なので「お召し上がりください」を使う
多少クドい表現(「許容されている二重敬語」も)が一般的になると、本来は何も問題のない敬語が敬度不足に感じられることがあります。「召し上がってください」もその例でしょう。
「お召し上がりください」を使っている人には「召し上がってください」は敬度不足に感じられるはずです。そう考えるなら、「お召し上がりください」を使うほうが無難でしょう。
また、「食べる」を「お~くださる」の形に当てはめて「お《食べ》ください」は、敬意の度合いが低いので、一般に使われません。
そこで、「召し上がる」という言葉の敬意が段々薄れてきて、「食べる」に換えて「召し上がる」を使って、「お《召し上がり》ください」としたものですが、上記のとおり正確には過剰な尊敬語表現になりますが、慣用として認められています。