夢野久作「ドグラ・マグラ」のあらすじは?結末・犯人(私の正体)は?
裏表紙に[これを読む者は一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大奇書。]というドグラ・マグラの意味は?
ドグラ・マグラの意味は?
ドグラ・マグラとは、探偵小説家の夢野久作が十年をかけて著した700ページにもわたる長編小説
昭和十年に書き下ろし自費出版された。
元々は長崎地方に伝わる方言で、伴天連切支丹の使う妖魔術の事を「ドグラ・マグラ」と言うらしいが現在は廃語となっているようです。
作中では
切支丹バテレンの呪術を指す九州地方の方言とされたり、「堂廻目眩(どうめぐり・めくらみ)」「戸惑面喰(とまどい・めんくらい)」がなまったものとも説明されているが、詳しくは明らかになってはいません。
小説では「切支丹が使う妖術や魔術」という意味で使われています。
ドグラ・マグラのあらすじ・結末は?
呉一郎は目を覚ますとそこはひどく殺風景な部屋で窓には鉄格子がはめられていた。壁の向う側からは少女の叫び声が聞こえてくる。
そこへ九州医科大学法医学教授・若林鏡太郎と名乗る男がやってきた。ここは精神科病棟で、若林は前任の主任教授だった正木が死亡したため兼任したのだという。
一郎は自分の名前も顔も覚えていなかった。若林によればそれは恐ろしい事件のショックのためで、記憶は自分の力で呼び戻さなければならなかった。
一郎はある日同じ病棟にいるモヨ子という少女と対面させられたが、彼女はなぜか自分のことをお兄様と呼んだ。
一郎とモヨ子は唐の玄宗皇帝末期の宮廷画家・呉青秀と楊貴妃の侍女・黛子の妹・芬子の子孫で深い因縁で結ばれていた。
呉青秀は初め黛子と結婚したが、彼女を殺してその死骸を裸にして写生を始めた。しかし、腐っていくのが早いため代わりの死体欲しさに次々と女を殺していく。
彼は自分を慕っていた芬子を連れて逃げ、途中で自分は海に落ちて死んだ。後に残った芬子はお腹の子と共に生き延びたという。
一郎とモヨ子はその時の二人の記憶を遺伝してしまっているのだという。また一郎はある日研究室で「ドグラ・マグラ」という小説を手にした。
若い大学生の患者が書いた推理物で、読んでいくうちに自分の頭がおかしくなっていくという。著者自身のほか正木や若林もモデルになっていた。
一郎の頭の中ではさまざまな過去のイメージや幻想、妄想が複雑に絡みあっていた。
死んだはずの正木との対話、母・千世子の想い出と母親殺しの容疑、婚礼前夜の花嫁殺し、モヨ子の遺体の替玉と怪人……。
そして、ある日一郎が目を覚ますと、そこは病室で窓には鉄格子がはめられており、彼は記憶喪失で自分の名前や顔も覚えていなかった。
途中で、訳の分からない「歌(チャカポコ)」が出て来たり、「胎児の夢」なる医学論文など、直接、この小説に直接関係の無い描写が多く出てきますが、
・あの訳の分からない「歌(チャカポコ)」は、当時の、精神病患者を取り巻く時代風景を、側面から、描いているだけです。
・医学論文風の「胎児の夢」は、後半へ言って、何故、あのような殺人事件が起きたかの伏線になっています。
ですので、この小説は途中の訳の分からない部分も一見無駄なようで、実は計算されていて、ちゃんとした結末への伏線となっています。
ドグラ・マグラなぜ狂う・精神に異常?
ドグラ・マグラは「日本三大奇書」と呼ばれるもののうちの一つですが、精神に異常をもたらすようなことはなく、単なるキャッチフレーズです。
※日本三大奇書とはドグラ・マグラ(夢野久作)黒死館殺人事件(小栗虫太郎)虚無への供物(中井英夫)
内容に少々狂気的な部分があるためにそんなキャッチフレーズを掲げられています。もちろん誇張です。
恐ろしい内容ではありますが、著しく情操に悪影響を及ぼすものではありません。
ただ推理小説家の横溝正史が、小林信彦氏との対談に備えて『ドグラ・マグラ』を再読した際に気分がオカシクになり、夜中に暴れたという逸話もあるようです