「そして誰もいなくなった」はミステリの女王アガサ・クリスティーによるクローズドサークルの金字塔と名高い傑作サスペンス小説
「そして誰もいなくなった」の犯人は誰?動機は何だったんでしょうか?
そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ小説)あらすじ
デボン州沖の小さな孤島に、8人の招待客が招待状を受け取り到着しました。トーマス・ロジャースとエセル・ロジャースという執事と料理人兼家政婦の夫妻が彼らを出迎えます。しかし、彼らのホストであるユリック・ノーマン・オーエン(Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーエン(Una Nancy Owen)はまだ到着していません。
各客室には古い童謡が飾られ、集まったダイニングテーブルには10個の置物がありました。夕食の後、蓄音機から流れるレコードが再生されます。そのレコードには、来客とロジャース夫妻の10人が殺人の加害者またはその原因となったと告発されています。
客たちはオーエン夫妻を知らなかったので、ウォーグレイヴ元裁判官は”U N Owen”という名前が「Unknown(未知)」をもじったものではないかと推測しました。その後、若者マーストンが飲み物を飲み干すと、すぐに青酸カリによる中毒死をしてしまいます。アームストロング医師は、他の飲み物にシアン化合物が含まれていないことを確認します。
そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ小説)犯人は判事?動機は?
マーストンが命を落とした翌朝、ロジャース夫人がベッドで死んでいるのが見つかり、昼食時にはマッカーサー将軍も撲殺されて死んでいました。客たちは、死因が童謡の各行と一致していること、置物のうち3つがなくなっていることに気づきます。
客たちはオーエンが計画的に彼らを殺しているのではないかと疑い、島を捜索しますが、オーエンは見つかりません。この島は無人島であり、誰も行き来した形跡がないため、残った7人の中に犯人がいると結論付けざるを得ません。翌朝、ロジャース氏は薪小屋で、エミリー・ブレントは居間で、それぞれ毒物を注射されて死亡しています。
ウォーグレイヴが全室を捜索するよう提案した後、ロンバートの銃がなくなっていることが判明します。ヴェラ・クレイソーンは自分の部屋に上がり、天井から海藻がぶら下がっているのを見つけて悲鳴を上げます。そのため、ほとんどの客が2階に駆け上がります。しかし、戻ってみると、ウォーグレイヴはまだ1階におり、銃で撃たれており、裁判官の服装で見苦しい状態になっています。アームストロング医師は彼の死を宣告します。
その夜、ロンバードの銃が戻ってきます。ウィリアム・ブロア探偵は誰かが家を出ていくのを目撃します。アームストロングは自室を空けています。ヴェラ、ブロア、ロンバードの3人は結束し、家を出ることに決めます。ブロアが食料を取りに戻ったとき、窓辺から押し出された熊の形をした大理石の時計によって殺されてしまいます。ヴェラとロンバードは海岸でアームストロングの遺体を見つけます。お互いが相手を犯人だと疑います。
ヴェラは敬意を表して遺体を海岸から移動する提案をしますが、それはロンバードの銃を手に入れるための口実でした。ロンバードが銃に向かって突進すると、彼女は彼を射殺します。ヴェラは精神的なショック状態で屋内に戻ります。自分の部屋には天井から首つりの縄があり、台となる椅子もあります。彼女は童謡の最後の行に従って首を吊ってしまいます。
数日後、警察が島に到着し、全員が死んでいることが判明します。島の所有者であるアイザック・モリスが招待客を手配し、録音を依頼したことがわかります。しかし、彼自身は招待客が到着した夜にバルビツール酸の過剰摂取で死亡していました。警察は被害者の日記と検視報告書を元に事件の経緯を再現しようとします。死亡時の状況や移動された物などから容疑者を絞り込みますが、最終的には犯人を特定することはできませんでした。
しばらくして、トロール船の網に、告白文が入った瓶がかかります。その中でウォーグレイヴは語ります。彼はかつて刑事裁判官という職業を通じて殺人犯に死刑を宣告することで欲を満たしていました。しかし、退職後、末期の病気に冒された彼は自分の私的な計画を実行することを決意しました。
島へ向かう前に、彼は消化不良のモリスにバルビツール酸を致死量投与しました。そして、アームストロング博士と共謀し、犯人の特定に役立つという口実で銃で撃たれたように見せかけました。その後、ウォーグレイヴはアームストロング博士と他の客を殺し、警察を混乱させるために物を動かし、最後に道具を使って自分自身の頭を撃ちました。彼は自分の本当の死が客の日記に記録された死のシナリオと一致することを確認し、自殺しました。
結局、警察は犯人を特定することはできませんでした。オーエンという存在自体が架空のものであり、ウォーグレイヴの計画によって招待客が一人ずつ殺されていったのです。
まとめ:そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ小説)犯人は判事?動機は?
「そして誰もいなくなった」の犯人は真犯人は、引退した判事、ローレンス・ウォーグレイヴ。一番最初に登場する老人です。動機については、ほか9人が「無実」と見せかけた「殺人」を行っており、その「正義の処罰(自分も含めて)」をするためでした。
そして、判事として9人の男女に死刑を宣告・執行した判事は、自分も殺人者であるとみなして自分自身に死刑を執行するという結末でした。
まず、自分が死んだように見せかけます。しかしこれは、アームストロングと二人で行った犯人(犯人というのは、ローレンスだけどアームストロングは別の人だと思っていたため「犯人」を引っ掛けるための罠ということになっていた。)を出し抜く(?)ための罠です。もちろん死体確認をするのはアームストロングなのだから、バレるはずありません。
このあと、ローレンスとアームストロングは邸宅の外で会いました。そして、「燻製にしんにのまれ」の童謡のようにアームストロングは別のところに注意を向けてしまいました。ローレンスが「洞窟の入り口だ」とか言って、アームストロングに崖をのぞかせ突き落としました。
ブロアもローレンスが大理石を落とし殺しました。
あとはロンバートをヴェラが撃ち殺し、部屋に戻るとローレンスの用意した首つりのロープが垂れ下がっていて、自殺した、ということです。
めがねはかけていません。ピストルは、ドアノブにぶつかりひもからは鳴れ、床に落ちます。
冒頭の
判事は思った。
「コンスタンス・カルミントンこそ、いかにも沖合いの島を買い取って、謎めいた噂に包まれそうな女性ではないか!」
判事は自分の出した結論に満足し、うなずいた。
というくだりは一言も嘘を書かずに読者を騙す、作者アガサ・クリスティのテクニック。
結末を知ってから再読すれば、これは、判事がカルミントンが島を買い取って暮らしていそうだと納得する場面のように見えるが、実は、カルミントンは島を買いとりそうな女性なので、偽の手紙の差出人として最適だと結論できたことに、犯人である判事が満足している場面であることが分かる。
つまり判事は、この招待状について正しく認識し、その心情が偽りなく描写されていたことがわかります。