エヴァンゲリオンに出てくるディラックの海の意味は?
場の量子論にも出てくる「ディラックの海」とは簡単に言うとなんでしょうか?
ディラックの海の意味は?エヴァンゲリオンの虚数空間
ディラックの海とは、物理学でいう考え方です。宇宙は、負のエネルギーの粒子で満たされていると考えられています。これらの粒子は、私たちには見えませんし、私たちと反応しません。しかし、そこにエネルギーが加わると、正のエネルギーの粒子が発生し、私たちに見えるようになります。
この考え方を、エヴァンゲリオンは、第12使徒レリエルの本体内部にある虚数空間を説明するために使っています。レリエルの本体内部は、直径680メートル、厚さ3ナノメートルの極薄の空間です。この空間は、内向きのATフィールドで支えられています。このATフィールドによって、負のエネルギーの粒子が閉じ込められ、虚数空間が形成されています。
赤木リツコは、この虚数空間が別の宇宙につながっていると考えています。この仮説は、科学的に証明されたものではありませんが、エヴァンゲリオンの世界観を理解する上で重要な役割を果たしています。
「虚数空間」とは、無の空間に陽子と反陽子が現れては衝突して消える空間を指す言葉で、エヴァンゲリオンの物語の中でワームホールのような意味で使われています。レリエルの本体である直径680メートルの影の内部には、ディラックの海と呼ばれる虚数空間が存在しており、それが別の宇宙につながっているのではとリツコは説明していました。
ディラックの海の意味は?場の量子論
ディラックの海は、相対論的量子力学において、真空状態が負のエネルギーを持つ電子によって完全に占められている状態であるというモデルです。ディラック方程式の解が負のエネルギー状態を持つことによって生じる問題を回避すべく、英国の物理学者ポール・ディラックが空孔理論の中で提唱しました。
ディラック方程式は、電子が満たす相対論的な量子力学の基礎方程式です。この方程式は負のエネルギーの解を持つため、電子はよりエネルギーが低い状態に落ち込んでいくため、安定な状態をとりえない。すなわち、エネルギーの基底状態となる安定な真空状態が存在しないことになる。こうした問題を解決すべく、ディラックは真空状態はすべての負のエネルギー状態が電子によって、埋め尽くされた状態とするディラックの海の概念を提唱した。パウリの排他律によれば、既に占有されている負のエネルギー状態に電子が入ることはできず、すべての負のエネルギー状態が埋まっているディラックの海では、より低いエネルギー状態に落ち込むことはない。
ディラックの海の概念は、固体物理学においても用いられています。固体物理学では、電子が価電子帯と伝導帯に分けて考えられています。価電子帯は、負のエネルギー状態に電子が占めており、伝導帯は、正のエネルギー状態に電子が占めています。電子が価電子帯から伝導帯に移ると、電流が流れます。
まとめ:ディラックの海の意味は?エヴァンゲリオンや場の量子論
ディラックの海とは場の量子論という現在の素粒子論が完成する前の、粒子反粒子描像。
相対論的に量子力学を考えると、粒子のエネルギー固有状態に負のエネルギー状態が現れます。
そこで、基底状態(真空)は、このエネルギー固有値が負の状態すべてに状態が詰まっているものと定めます。
この状態が詰まりきっている状況を指してディラックの海と呼びます。
ディラックが提案した。
この世は負のエネルギーの粒子で満ち満ちている。負のエネルギーの粒子で満ちている空間(世界)をディラックの海と呼んだ。
ディラックの海から粒子が飛び出すと穴(空孔)ができる。その空孔が反粒子となる、という考え方。
場の量子論では、その考え方はせず、反粒子も空孔じゃなくて普通に粒子のように考えるため、廃れた考え方。
噛み砕くと、
光の速さで運動するような小さな粒子の理論を考えてみると、粒子が存在すればするほどエネルギー的に安定化してしまいます。
我々のこの世界には物質は有限の量しかないですよね?
なのに、理論では、この世界は物質に満ち溢れていなければおかしい、という意味不明な結論を出しているわけです。
そこでディラックさんは我々の現実への直観が間違っているのであって、理論こそが正しいと考えました。
(普通の人なら理論が間違っていると考えますよね?)
そう、この世界は既に物質に溢れているのであって、そこで安定化しているとしたのです。
つまり世界は物質で溢れかえっていて、海みたいな状況ってわけです。
これをディラックの海と言います。
さて、そうなると、その溢れかえっている物質の海から物質を抜き取る、ということが出来そうですが、実際出来ちゃうんですね。
エネルギー負の状態から物質を引き抜くと、エネルギー的に損なので、相応のエネルギーが必要なのですが、実験的に確認されています。
電子のディラックの海から状態を一個分引き抜いて出来る粒子を、かつてディラックは正孔と呼びましたが、現在では電子の反粒子・陽電子として知られています。
エヴァンゲリオン劇中では本義ディラックの海に取り込まれた初号機には自力での脱出が不可能とされたために、リツコは強制サルベージを提唱したが、その内容は当時現存していた992個のN2爆雷を一斉にディラックの海内部に投下し、同時に零号機と弐号機がATフィールドを展開して1000分の1秒だけ虚数空間に干渉することで初号機の回収を図り、パイロットの碇シンジの生死は度外視するものであった。しかし、実際は作戦実行前に暴走したレリエルを殲滅すると同時に、自力でディラックの海、つまりレリエルの内部から脱出した。
また、ネルフアメリカ第2支部で建造中であった4号機へのS2機関搭載実験中の事故で、4号機を中心とした半径89キロ以内の全ての施設と職員数千人がディラックの海へと消えたと推測されている。