時計じかけのオレンジのラストシーンについて。
アレックスは最後、病院で政府に世論操作の材料に使われますが、「完璧に治った」と言って終わる意味は？
結局アレックスは、暴力も性行為も音楽も嫌になったってことなんでしょうか？
時計じかけのオレンジのラスト解説・考察
映画『時計じかけのオレンジ』のラストについて物語の最後、主人公のアレックスは政府の矯正治療によって元の凶暴な自分に戻ります。彼は以前の狂暴な状態に戻ったことを証明するため、拒否反応の一環として植え付けられていたセックスを再び行います。そして、「俺は治ったんだ」とつぶやきます。このセリフは、彼が再び犯罪者としての自己を取り戻し、政府の矯正治療が失敗であることを皮肉っています。
このラストには、政府の矯正が失敗であることを示唆するブラックユーモアの要素が含まれています。政府はアレックスを矯正することで社会に復帰させようとしていましたが、その結果、彼は再び犯罪者としての自己を取り戻してしまいました。物語は政府の失敗を皮肉りつつ終わり、どこが正しくて、何が間違っているのか、正義や悪とは何かといった問いを投げかけています。
時計じかけのオレンジのラスト｜スタンリー・キューブリックの意図は？
監督本人は、この映画のテーマについて明言していませんが、映画の内容から、以下のようなものが訴えたかったのではないかという解釈がされています。
暴力犯罪の根源的な解決は不可能である
自由と安全は、必ずしも両立するものではない
人間の本質は、善と悪の両面を併せ持っている
主人公のアレックスは、政府の矯正治療を受けて自己を変えられようとする過程で、社会と個人の自由の間で揺れ動きます。映画は、彼が再び犯罪者の自己を取り戻すことで政府の矯正が失敗であることを示し、更生という理念に疑問を投げかけます。
さらに、映画は政府の権力や個人の自由、更生プロセスなど、社会的な問題に対するアプローチやその限界についても問いかけます。人間の行動を変えようとする政府の介入が果たして成功するのか、またそれが個人の尊厳や自由にどのように影響を与えるのか、という疑問を投げかけています。
暴力犯罪の根源的な解決は不可能である
主人公のアレックスは、ルドヴィコ療法によって暴力性を抑制されるものの、根本的に治癒することはできません。むしろ、アレックスは、自由を奪われたことにより、暴力への拒絶反応を克服し、再び暴力に戻ってしまいます。
このことから、暴力犯罪は、単に犯罪者を罰したり、治療したりするだけでは根本的に解決することはできず、社会全体で暴力を抑制するような取り組みが必要であるというメッセージが読み取れます。
自由と安全は、必ずしも両立するものではない
アレックスは、ルドヴィコ療法によって暴力への拒絶反応を植え付けられたことで、自由を奪われます。しかし、アレックスはそんな自分の姿に虚無感を覚え、自由を取り戻すために再び暴力に戻ってしまいます。
このことから、自由と安全は、必ずしも両立するものではなく、どちらか一方を犠牲にしなければならないこともあるというメッセージが読み取れます。
人間の本質は、善と悪の両面を併せ持っている
アレックスは、暴力的な犯罪者ですが、一方で、音楽や文学に造詣が深く、繊細な感性を持っているという一面も持ち合わせています。
このことから、人間の本質は、善と悪の両面を併せ持っているものであり、どちらの側が表に出てくるかは、環境や状況によって左右されるというメッセージが読み取れます。
まとめ：時計じかけのオレンジのラスト解説・考察
映画『時計じかけのオレンジ』のラストシーンは、主人公のアレックスが、暴力や性犯罪への生理的拒絶反応を植え付けられる「ルドヴィコ療法」によって更生を果たした後、再び暴力に戻ってしまうというものです。
アレックスは、ルドヴィコ療法によって、暴力を目にしただけで激しい嘔吐や痙攣を引き起こすようになりました。そのため、彼は暴力行為を一切行えなくなってしまったのです。しかし、アレックスはそんな自分の姿に虚無感を覚え、自由を奪われたと感じていました。
ある日、アレックスは、かつて自分を裏切った仲間たちから襲われてしまいます。アレックスは、必死に抵抗しますが、彼の暴力への拒絶反応は、仲間たちの暴力には効きませんでした。アレックスは、仲間たちに殴られ、蹴られ、やがて意識を失ってしまいます。
アレックスが目を覚ますと、彼は病院のベッドに横たわっていました。医師は、アレックスに「あなたは治りました。もう暴力を振るうことはないでしょう」と言います。しかし、アレックスは、医師の言葉に反して、笑みを浮かべます。
アレックスの笑みは、彼が再び暴力に戻ってしまうことを意味しています。ルドヴィコ療法は、アレックスの暴力性を一時的に抑えるだけであり、彼の本質的な暴力性は消えなかったというのです。
このラストシーンは、暴力犯罪の根源的な解決は不可能であるというスタンリー・キューブリック監督のメッセージであると解釈できます。また、自由と安全、そしてその対立関係を問う作品としても読み解くことができます。
具体的には、アレックスは、ルドヴィコ療法によって自由を奪われる代わりに、安全を手に入れることになります。しかし、アレックスはそんな自分の姿に虚無感を覚え、自由を取り戻すために再び暴力に戻ってしまうのです。このことから、自由と安全は、必ずしも両立するものではなく、どちらか一方を犠牲にしなければならないこともあるという示唆が読み取れます。
また、ラストシーンでは、アレックスが笑みを浮かべている点も注目されます。この笑みは、アレックスの自由を取り戻した喜びを表しているとも考えられますが、同時に、彼が再び暴力に戻ってしまうことを予感させるものでもあるのです。このことから、自由と暴力は、表裏一体の関係にあるという示唆も読み取れます。
