秋山木工は現代でも厳しい「丁稚制度」を貫く家具の制作会社で、社員には「坊主で丸刈り」「恋愛禁止」「スマホ禁止(連絡手段は手紙)」といった規則があります。
ブラック企業とかパワハラとも指摘されるものの、それでも秋山木工に入社したいという若者が絶えることはなく、一流の職人を輩出し続けています。
秋山木工の丁稚制度がすごい!
秋山木工では丁稚制度を採用しちえます。
丁稚制度とは江戸時代から昭和初期にかけて盛んだった徒弟制度の一つ。
職人や商家などの親方の家に住み込み、一定期間奉公する制度で、ドラマ「おしん」も丁稚として奉公に出されていました。
他にも”経営の神様”こと松下幸之助氏、ホンダ創業者の本田宗一郎氏も”丁稚時代”を経験していることが知られています。
秋山木工では家具職人見習いとして採用した新入社員を若者を「丁稚(でっち)」と位置付け、
丁稚たちは5年間(丁稚見習い1年、丁稚4年)にわたって尞生活を送りながら、基本的な生活習慣から本格的な木工技術並びに厳しい人材育成を経験します。
毎日5時起床、23時就寝。近所を1.5キロ走ったのち近隣の清掃を行ってから、新入社員が持ち回りで朝食の準備に当たります。食事の好き嫌いも当然禁止。
入社後は男女問わず全員丸刈りになる。携帯電話・パソコンは禁止で、私的な連絡手段は手紙のみ。
休みは盆と正月以外になく、恋愛は「絶対禁止」となっているうえに風邪をひくことすら禁止事項に入っていて、3度の風邪でなんとクビにさせられてしまいます。
そんな秋山木工では「職人心得30箇条」というのが存在しています。
■1、挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます
挨拶はコミュニケーションの第一歩です。
また、人との信頼関係を築いていく上で大切です。
■2、連絡・報告・相談のできる人から現場に行かせてもらえます
常に報告、連絡、相談を行うことにより、指示を出してくれた方に安心していただき、
何かあったときにすぐに対処することができます。
■3、明るい人から現場に行かせてもらえます
明るい職人さんのまわりには人が集まり、仕事がいただけます。
■4、まわりをイライラさせない人から現場に行かせてもらえます
お仕事はチームプレーです。集団行動の中で人をイライラさせないためにはまわりに合わせ、
協調性のある行動をとることが大切です。
■5、人の言うこと正確に聞ける人から現場に行かせてもらえます
指示された内容を正確に理解し、素直に行動することが大切です。
■6、愛想よくできる人から現場に行かせてもらえます
いつも愛想よくしていることにより、まわりの方に気持ちよく作業していただけます。
■7、責任を持てる人から現場に行かせてもらえます
仕事に失敗は許されないので、緊張感を持ち、仕事を最後までやり抜くことが大切です。
■8、返事をきっちりできる人から現場に行かせてもらえます
わかっているのか、いないのか、意思表示をすることにより仕事のミスをなくします。
■9、思いやりのある人から現場に行かせてもらえます
相手のことを自分のことのように考え、行動できることが大切です。
■10、おせっかいな人から現場に行かせてもらえます
人の幸せだけを願い、行動できることは大切です。
■11、しつこい人から現場に行かせてもらえます
人間の限界を決めず、技術も人間性もとことん追求していくことが大切です。
■12、時間を気にできる人から現場に行かせてもらえます
時間はお金より大切なものだと言われています。
もたもたしている人は一流の職人になることはできません。
また、時間を守ることで相手から信頼していただけます。
■13、道具が整理されている人から現場に行かせてもらえます
いつお仕事をいただいてもすぐ取りかかれるようにしておくことが大切です。
■14、お掃除、片付けの上手な人から現場に行かせてもらえます
仕事の最後の仕上げであり、次の仕事の段取りでもあるので大切です。
■15、今の自分の立場が明確な人から現場に行かせてもらえます
自分の立場をわきまえることにより、常に謙虚でいられます。
■16、前向きにことを考えられる人から現場に行かせてもらえます
後ろ向きに考えていては前に進めません。これから自分がどうなりたいのか、
そのためには何をすべきなのか考え、行動することにより、日々成長していけます。
■17、感謝のできる人から現場に行かせてもらえます
人は一人では生きていけません。常にまわりの方に支えていただいていることを感謝し、
その感謝を行動に移せることが大切です。
■18、身だしなみのできている人から現場に行かせてもらえます
社会人の最低限のマナーであり、身だしなみを整えることで
気持ちよく安全に家具をつくることができます。
■19、お手伝いのできている人から現場に行かせてもらえます
まわりをよく見て、人が何をしてほしいのか察知して動けることが大切です。
■20、自己紹介のできる人から現場に行かせてもらえます
自己を見つめ直し、相手に自分を知っていただくことが大切です。
■21、自慢のできる人から現場に行かせてもらえます
お客様のために、どのようなものを、どう工夫したのか説明できることが大切です。
■22、意見が言える人から現場に行かせてもらえます
意見を出し合うことで、いいものを素早くつくることができます。
■23、お手紙をこまめに出せる人から現場に行かせてもらえます
親には近況報告をし、こまめにお礼状を書くことにより、人の輪が広がります。
■24、トイレ掃除ができる人から現場に行かせてもらえます
一番汚れる場所を磨くことで、自分の心も磨かれます。
■25、道具を上手に使える人から現場に行かせてもらえます
道具を自分の手足のように使えることで、
お客様に感動していただける家具をつくることができます。
■26、電話を上手にかけることができる人から現場に行かせてもらえます
相手の顔が見えない分、簡潔にわかりやすく伝えることが大切です。
■27、食べるのが早い人から現場に行かせてもらえます
食べることにも段取りが必要です。
集中しておいしくいただく癖をつけることで、仕事の効率も上がります。
■28、お金を大事に使える人から現場に行かせてもらえます
丁稚見習いたちは、秋山学校からの奨学金と実家からの仕送りで生活しています。
お金が生まれる過程を正確に理解し、大切に使うことで感謝の気持ちを表せます。
■29、そろばんのできる人から現場に行かせてもらえます
頭の回転や計算を早くすることで、仕事の効率が上がります。
■30、レポートがわかりやすい人から現場に行かせてもらえます
その日学んだことを頭の中で整理し、
わかりやすく書こうとすることで、もう一度身に付きます。
秋山木工の丁稚が坊主・丸刈りはパワハラ?
秋山木工では入社からしばらくは全員丸坊主にしなければいけません。さらに8年もすると強制退職させられてしまいます。
以前に秋山木工のやり方がテレビで紹介されたときには「パワハラ」という声があり、
ネットでも「労働基準法違反ではないか」「ブラックすぎる」などと物議を醸しています。
秋山木工のWikipediaページでも「丁稚制度」を「奴隷制度」と書き換えられるなど荒れてしまったことがありますが、
「両方が本気じゃないとダメ」と秋山木工の社長は話しています。
「『ブラック企業』などと言いたい人は言えばいい」というのが社長の考えで、厳しい社風だがそれでも採用枠には毎年10倍以上の応募が集まります。
有名大学の出身者も珍しくないほど就職希望をする人が多い背景には、
育てるほうには「こいつを一流のスタープレーヤーにする」という強い思いがあるからです。
秋山木工では8年経つと強制退職させられるのも、同じ工場で、同じ親方や仲間に囲まれながら成長していくのは難しいものがあるという考えがあるから。
刺激がなくなり、どうしてもマンネリ化してしまうので、あえて職人の伸び盛りである25~28歳の頃と重なる8年後に退職させて、環境を変えさせています。
通常の企業の採用では、入社して1年目や2年目の社員なんて使い物にはならずむしろ会社にとっては負債です。
入社歴が長くなり経験を積んできて初めて会社に貢献できる人材に育っていくものの、秋山木工では「伸び盛りの時期にいつまでも自分の下にいるのはよくない」という考えで、むしろ使える人材をどんどん会社から放出させています。
「私は、彼らには違う世界で武者修行をして、さらに成長してもらいたいと思っています。職人たちがより伸びていくためには、他の場所で働く事が絶対に必要なのです。」と社長は話しています。
ただ、労働基準法を度外視した独自のルールに関しは、日本労働弁護団事務局長の嶋﨑量氏も苦言を呈しているのは確かです。
「こういった企業風土を礼賛する報道は、本当に止めて欲しい」とツイートした。
記事をめぐる余波はWikipediaにまで及んだ。10日以降、秋山木工のページには、「労働基準法第34条ならびに第35条に明確に違反しているが、現在に至るまで行政処分等は行われていない」と記述が加えられたほか、文中の「社員研修」が「奴隷調教」に変えられたり、「事業内容」が「うんちの製造」となったりと、さまざまな加筆がなされたのだ。
https://www.j-cast.com/2016/10/11280334.html?p=all