「ありえへん世界」のアンジー・ダッジの未解決事件は、アイダホ州アイダホフォールズで1996年6月13日の犯行発生から2019年5月までコールドケースとなっていました。
DNA鑑定を応用した家系図作成サイト「GEDmatch」と有名な系譜学者のシーシー・ムーアによってアンジー・ダッジの未解決事件の真犯人が明らかになりました。
アンジー・ドッジ未解決事件の経緯｜ありえへん世界
アンジー・ダッジは1996年にアイダホ・フォールズの自分のアパートに引っ越してからまもなく、何者かに性的暴行を受けて命を奪われます。
捜査の最初の段階で、アイダホフォールズの職員は当時20歳のクリストファー・タップがドッジ殺害と目星をつけ、100時間を超える警察の激しい尋問を続けます。
タップは現場と彼を結びつける物証がないにも関わらず、事件の詳細を伝え、自分ともう一人の容疑者を巻き込まない限り死刑になる可能性があると告げました。
タップの自白には矛盾があったが犯行を自白した。タップはドッジ殺害を幇助した罪で有罪判決を受け、最低でも30年の禁固刑を言い渡されます。
2001年、タップは自白を撤回し、警察から強要され、犯罪に関する情報を与えられたと主張。
2007年、10年の服役後、冤罪証明を行う非営利活動機関「アイダホ・イノセンス・プロジェクト」によってドッジの事件が再捜査されることいなります。
「アイダホ・イノセンス・プロジェクト」で働くボイシ州立大学の教授と学部生がタップの取調べのテープを見直し、タップが自白を強く強要されたという結論に達したからです。
犯行現場から採取されたDNAの証拠は2016年まで検査されなかったが、その結果、タップの遺伝子はサンプルに存在しないことが判明した。
彼は、殺人の刑期が短縮され、強姦の有罪判決が取り消されるという取引に成功し、2017年に釈放された。
タップの事件は2017年に控訴されると容疑が取り消され、30年の刑を20年に減刑することになった。
タップは20年の刑期を全うし、釈放されます。
しかし、タップにはイノセンス・プロジェクトという支援団体と、ドッジの母親であるキャロル・ドッジの両方が支持していた。
クリス・タップの他にも、マイケル・アスリート・ジュニアがドッジ殺害の容疑者の一人とされていました。
アイダホフォールズを経由している彼の旅行の記録や、若い女性の残忍な殺人に関わる『マーダービリア』などの彼の暗い映画の性質も疑われる要因となりました。
マイケル・アスリ・ジュニアは、ルイジアナ州ニューオリンズ出身の映画監督で、マイケルの父親であるマイケル・アスリ・シニアは、DNA研究機関「ソレンソン分子系図財団」にDNAサンプルを提供。
ソレンソン分子系図財団では父方の先祖をたどるための遺伝子データのデータベース を検索し、34/35検索対立遺伝子で マイケル・アスリの血縁と一致したことが判明
しかしダッジの殺人現場にあったサンプルと遺伝子が一致しないことが判明し、マイケル・アスリ・ジュニアに対する疑惑は取り下げられていました。
アンジー・ドッジ未解決事件の真犯人は？ありえへん世界
2018年末、アイダホフォールズ当局はドッジの殺人者を見つけるために家族DNA検索を利用するバージニアのシーシームーアに捜査協力を依頼。
DNA鑑定を応用した家系図作成サイト「GEDmatch」を検索して近縁の捜索を始めます。
その結果、犯人は「Clarence Ussery and Cleo A. Landrum」という夫婦の孫か曾孫であることが判明
捜査官は、容疑者の一人がアンジー・ドッドが殺害された1996年にアイダホに住んでいたことを確認します。
警察はその容疑者を尾行してDNAサンプルを採取したものの、23年前の犯行に残されたDNAとは一致せず、陰性に終わります。
さらに3ヶ月の家系調査の後、シーシームーアは同じ夫婦の子孫で、ブライアン・リー・ドリップス・シニアというこれまで知られていなかった7人目の容疑者を発見いｓます。
彼は1996年にアイダホ・フォールズに住み、2019年にはアイダホ・フォールズから遠くないコールドウェルに住んでいた。
捜査官は彼の車の窓から投げられたタバコの吸殻からDNAサンプルを入手、完全に遺伝子が一致しました。
ブライアン・リー・ドリップス・シニアは、ドッジの死の周辺の期間、ドッジ家の向かいのアイダホ・フォールズに住んでいた人物。
尋問の結果、ドリップスはアンジー・ドッジの殺害を自白。2021年の2月に罪を認めました
55歳となったブライアン・リー・ドリップス・シニアは裁判では仮釈放の資格を得る前に少なくとも20年は服役する判決が下されました。
クリス・タップは、ブライアン・リー・ドリップス・シニアがドッジの殺人容疑者として逮捕された後、2019年7月に殺人容疑の冤罪を晴らしています。
アンジー・ドッジ未解決事件の再捜査｜ありえへん世界
殺害されたアンジー・ドッジの母キャロルさんは、クリストファーさんと裁判所で初めて顔を合わせや否や「悪魔め！」と罵り、憎しみを募らせた。
しかし警察の捜査には矛盾が多かったことや、2004年、娘の死により神経衰弱に陥った夫のジャックさんを亡くしたこともあり「真実を突き止めてみせる」と自分でも事件の情報を集め始めます。
キャロルさんはまず、クリストファーさんの件ですでに動き始めていた「アイダホ・イノセンス・プロジェクト」ともやり取りし、DNAについてのリサーチを重ねていきます。
その結果「DNAが違うのに、クリストファーさんが犯人であるはずがない」と確信し、さらにクリストファーさんの弁護士ジョン・トーマス氏を訪ね、当時の取り調べや、嘘発見器検査の様子が収められた動画を見たことも転機となりました。
キャロルさんは事件から13年が過ぎていたにも関わらず、クリストファーさんの無実を証明すべく行動を開始していました。
アンジーさん殺害から23年後の今年5月、事件は急展開を迎えた。アイダホ・フォールズ警察が同州コードウェルに在住のブライアン・レイ・ドリップス（53歳）をアンジーさんの殺害の罪で逮捕したのだ。会見を開いた同警察署長のブライス・ジョンソン氏は、DNAが現場に残されていた型と一致したこと、ブライアンが性的暴行と殺人の容疑を認めたことを明かした。ブライアンは犯行当時、アンジーさんのアパートの斜め前に住んでおり、2人は顔見知りで警察は事件の数日後にブライアンに聞き取り調査をしていたが、犯人候補からは除外されていた。容疑者特定の決め手になったのは「遺伝子系図」と呼ばれるDNAプロフィールのデータベースで、警察はこれによりDNAが一致する親族を探し出し、犯人を絞り込んだ。
事件当時19歳だったクリストファーさんは、全ての無罪が確定した時には43歳になっていました。
「娘の死に疑問を持ち、正義を追いかけて私のために立ち上がり、決して諦めなかったキャロルさんには感謝しきれません。事件から10年以上の間、キャロルさんは私に怒りと憎しみをぶつけてきました。でもその後、彼女は私の一番の理解者となり支えてくれたのです。もしキャロルさんがいなかったら、私は未だに刑務所の中にいたことでしょう。」
アンジーの母キャロルとの関係について素晴らしい関係を築けていて第2の母のように慕っていると話しています。
家系図作成サイト「GEDmatch」のファミリー・サーチが犯罪解決の突破口に
ファミリアサーチとは、遺伝子的に一致しない個人を、その親族と近似的に一致するものを見つけ、系図データを用いて当該個人を特定すること。
この事件の捜査官は、容疑者候補を見つけるために犯罪者ではないデータベースを使用したことについて精査され、関係者のプライバシー侵害ではないかと物議を醸しています。
マイケル・アスリ・ジュニアの場合、自分の祖先（ルーツ）を知るためのレクリエーション目的の系図プロジェクトとして作成し、彼と彼の父親の居場所を突き止めています。
マイケル・アスリ・ジュニアの父親は、自分の遺伝子データがいつか捜査のために使われ、自分や自分の親族が犯罪に巻き込まれる可能性があるとは知らずに、ＤＮＡサンプルを提供したそうです。
この手法の使用は、今回の件だけにとどまりません。家族DNA検索と同じ方法が、ゴールデンステートキラーの発見にも貢献しています。
捜査関係者はアンジー・ダッジ事件の成功により、今後の犯罪捜査でファミリーサーチの使用を推進するとしています。
