「福徳銀行5億円強奪事件」とは、1994年に神戸市中央区三宮町の福徳銀行神戸支店から現金5億円が強奪された事件です。金融機関における1回での現金強奪金額としては、あの3億円事件を超える最高金額となっています。
兵庫県警は時効成立までに捜査員延べ約13万人を投入して捜査が続けられ、2002年4月1日に時効が成立したものの、その後、思わぬ形で犯人が逮捕されます。
森下香枝による「史上最大の銀行強盗―5億4000万円強奪事件」でドキュメンタリー小説にもなっています。
■内容
「警察は負けたんだよ。あのバカどもは」94年夏、福徳銀行神戸支店での事件発生から8年ーー。日本犯罪史上、最大の銀行強盗事件の真相が今、明らかに。ノンフィクション・ノベルの最高傑作!
福徳銀行5億円強奪事件とは?
福徳銀行5億円強奪事件は、金融機関における1回の現金強奪事件としては、1968年に発生した東京都府中市の3億円事件をはるかに超える被害額が過去最高額の事件です。
1994年8月5日午前9時20分頃、神戸市中央区三宮町の福徳銀行神戸支店の車庫にて、行員3人が現金輸送車から現金5億4,100万円が入ったジュラルミンケース3個を下ろそうとしたところ2人組の男が近づきます。
行員らに拳銃のようなものを向けてライトバンに押し込んだ。その隙にジュラルミンケース3個を強奪し、乗り付けてきた軽ワゴン車を猛スピードでとばして逃走した。
逃走に使用された車は、のちに銀行から約600m離れた場所で発見され、盗難車であることが判明します。
行員3人より、2人組の犯人の風貌も明らかになっています。
■短銃を持っていた犯人
年齢40歳くらい
身長170cm
グレーの作業服にサングラス
■もう1人の犯人
50歳ぐらい
身長172cm
ベージュの作業服
顔に包帯のようなものを巻いていたミイラの男
兵庫県警がかなりの人数の捜査員を配備し捜査を続けた結果、1999年10月、換金を依頼した札が奪われた札の記番号と一致することが判明。
犯人のひとりが知人に犯行を打ち明けたことで、元暴力団員M(事件当時43歳)と元会社員X(事件当時55歳)を犯人として捜査が進められた。
事件は急展開を見せましたが、1997年11月29日、兵庫県警は犯行を知人に打ち明けたXを事情聴取したが、Xはその直後に首を吊って自殺した。
Mは事件の後で韓国や香港、グアム島などの海外に渡航を繰り返していたため、刑事訴訟法255条1項によって公訴時効が約8か月延長されていたが、2002年4月1日、公訴時効が成立した。
金融機関に特定しないとすると、2011年に発生した立川(東京都立川市)の現金6億円強奪事件が史上最大の被害金額であり、こちらは警備保障会社から6億円が強奪されました。
福徳銀行5億円強奪事件は時効後に犯人逮捕!
事件が時効を迎えた5年後の2007年、今度は愛知県にある愛知信用金庫西大須支店現金強奪事件が発生しました。
このときは襲われた行員が犯人を取り押さえ、犯人は駆け付けた警察によって現行犯逮捕されます。逮捕された犯人のうちのひとりが福徳銀行5億円強奪事件にかかわった犯人でした。
男の名前は森本喜博容疑者で韓国人名の偽造パスポートで入国し、静岡県内の知人宅に立ち寄ったり、99年末までの約2年間、同県浜松市内の賃貸住宅に潜伏するなどしていた。
まぶたを二重にする整形手術を受け、「菅原」「木村」「許」などの偽名を用いて逃亡していた。
仕事場は被害にあった福徳銀行からほんの徒歩1分って距離だったそうです。
福徳銀行5億円強奪事件はグリコ・森永事件は同一犯?
福徳銀行5億円強奪事件で逮捕されなかった犯人(自殺をした犯人)は、グリコ・森永事件の犯人のひとりであると言われています。
グリコ森永事件当時40代であったという「てっちゃん」。
当時の彼を知る者の証言によると、てっちゃんは事件に関与していることをほのめかす発言をしていました。
犯人が自殺をしたため、断定はできないものの、『史上最大の銀行強盗:5億4000万円強奪事件』(森下香枝著・幻冬舎刊)などでは、福徳銀行5億円強奪事件とグリコ・森永事件を関連付けるいくつかの根拠が示されています。
同書によると、犯人は福徳銀行5億円強奪事件で奪った金の一部を自殺した犯人はアパートの屋根裏に隠していましたが、このアパートは1995年の阪神淡路大震災によって焼失してしまいました。
事件が話題となっていた当時「被害者に『ダライ粉』が付着したおそれがある」ことを心配していたそうです。
『ダライ粉』とは金属屑のことで、てっちゃんの当時の仕事であった鉄粉の回収作業で使用していたもの。
江崎グリコ社長誘拐の際に目隠しのため使用された袋にダライ粉が残っていて、被害者に付着したかもしれないと恐れれていました。
実際に放置車両や江崎社長の頭髪からは少量の金属屑が検出されたとの話もあるようです。
「てっちゃん」についての新証言を引き出したのは、当時、朝日新聞(週刊朝日編集部)に勤めていた森下香枝さん。
2007年には、グリコ・森永事件についての新事実をノンフィクション「グリコ・森永事件『最終報告』 真犯人」として発表しています。
「史上最大の銀行強盗―5億4000万円強奪事件」を書いたところ、犯行直前まで犯人たちの仲間だったという人物から14枚にもおよぶ便せんが届いたことで、てっちゃんの存在が明らかになりました。
グリコ・森永事件は、2016年に塩田武士によるサスペンス小説「罪の声」が発表され、2020年10月には小栗旬と星野源のW主演で実写映画が公開されています。
グリコ・森永事件の実行犯を知る人物に取材成功 『グリコ・森永事件「最終報告」 真犯人』著者がきっかけを解説
「グリコ・森永事件の真犯人SP 謎に終止符 意外な真相とは?」と題して、未解決のまま時効となった「グリコ森永事件」について、真犯人と思われるグループと接触、事件の核心に迫ることに至った顛末を記した『グリコ・森永事件「最終報告」 真犯人』の著者である森下香枝氏をゲストに招き話を聞いた。
森下氏によると本書を書くきっかけとなったのは、こちらも未解決のまま時効となった「福徳銀行 5億4000万円強奪事件」だったという。
この事件に関する本を書いたところ、犯行直前まで犯人たちの仲間だったという人物から14枚にもおよぶ便せんが届いたという。
内容は「5億4000万円強奪事件」の実行犯だという「ミイラ男」と呼ばれていた男が「グリコ・森永事件」に関わっていたというもの。「ミイラ男」は会話をする際に「グリコ・森永事件」に関する隠語を使うなどしていたそう。
森下氏は「5億4000万円強奪事件」のもう1人の実行犯である「サングラスの男」と呼ばれていた男へも取材を実施。別の事件で逮捕をされていたため獄中での取材となり「聞いたことありますか?」と問いかけると、彼も「ミイラ男」が「グリコ・森永事件」の犯行に関わっていたという話を聞いたという。
「ミイラ男」はこのときには既に自殺をしてこの世を去ってしまっていたため、森下氏は「ミイラ男」の弟にも取材を実施。3者の証言を捜査資料と照らし合わせて本著を書いたのだと、いきさつについて語った。
https://times.abema.tv/news-article/8631646