ヘリオス航空522便墜落事故はTBS「世界衝撃映像100連発」でも2016年「命がけの映像SP」について2021年でも紹介されました。
機長および副操縦士が2人とも失神(意識不明)に陥り、飛行機の操縦経験を持つCAが代わりに操縦桿を握って立て直しを図ろうとしたものの、残念な結果となりました。
ヘリオス航空522便墜落事故の概要
ヘリオス航空522便墜落事故は2005年8月14日に起きた航空事故で、乗客・乗員121名全員が命を落とす大惨事となりました。
コールサイン : HELIOS 522
使用機材 : ボーイング737-300(機体記号 5B-DBY 機体名:OLYMPIA / オリンピア)[1]
フライトプラン:キプロス・ラルナカ国際空港 午前9時7分(現地時間)発・ギリシャ・アテネ国際空港経由 チェコ・ヴァーツラフ・ハヴェル・プラハ国際空港行き
機長:58歳・男性
副操縦士:51歳・男性
客室乗務員:プロドロモウ(25歳・男性)他、計4名
乗客:115名
乗員乗客、合計121名
使用機材の「ボーイング737-300」は1997年に製造された機体でドイチェBA(英国航空の子会社)に機体記号 D-ADBQとして納入された後、2004年からヘリオス航空にリースされていました。
■ヘリオス航空522便墜落事故のタイムライン※時刻は現地時間
09:00 ヘリオス航空522便はキプロスのラルナカ空港をアテネに向けて離陸。最終目的地はチェコのプラハ。
09:20頃 巡航高度の FL350 (35000feet, 10700m) に到達。
09:37 ギリシャ空域に入る。
10:07 航空管制センターからの呼びこみに応答なし。
10:30 ギリシャの航空管制センターが「Renegade alert(指示に従わない航空機がいる旨の警報)」を発効。
10:55 F16戦闘機がスクランブル発進。
11:20 F16戦闘機が552便に接近、F16のパイロットが操縦室の様子を観察する。
12:05 アテネの約40km北方に位置する Grammatikos 近くに墜落
ヘリオス航空522便墜落事故の経緯
2005年の8月14日、キプロス新興航空会社ヘリオス航空の522便はキプロスからプラハへ向けて離陸しました。
そして機体が高度16,000フィート(約5,000メートル)にのぼろうとした時、機長・操縦士を含めた乗員・乗客が次々とと意識を失い失神。
マスター警報装置が作動し、客席から酸素マスクも落下していましたが時すでに遅し。
操縦士が意識を失う中、機体は自動航行によりアテネ空港に接近しますが、やがて燃料切れを起こした機体はアテネ北方のグランマティコ村の近くの山中に墜落しました。
かろうじて市街地への墜落を避けることができて被害を最小限に抑えることができましたが、この時、飛行機の中では男性CAのプロドロモウが人知れず孤軍奮闘していました。
ヘリオス航空522便墜落事故の原因は低酸素症
ヘリオス航空522便は機体の上昇に伴い、機内の気圧はどんどん低下していました。
本来であれば与圧システムによって機内の気圧は一定以上に保たれるものの、異常が発生したことに機長・副機長も見逃してしまいました。
機内の気圧低下に従って酸素濃度もどんどん薄くなります。上空5000mを超える高度ですから、空気の量は地表に比べると4分の1以下になったようです。
乗客・乗員は高山病を通り越してあっという間に低酸素症に陥って呼吸機能が低下し、神経の機能も衰えていきます。
痛みや苦しさを感じることもなかったため、機内の低下が下がっていることに気づかず飛行を続けた結果、乗客・上院全員が低酸素症になり、ほとんどの人たちが意識を失ってしまいます。
ヘリオス航空522便墜落事故でのプロドロモウの奮闘
アテネ市街地への墜落を防いだのはプロドロモウ(Andreas Prodromou)という男性CAの働きによるものでした。
機長・副操縦士らパイロットが意識を失う中、客室乗務員のプロドロモウがコクピットに侵入します。
プロドロモウはスキューバダイビングやキプロスの特殊部隊に所属していた経験から、低酸素状態でも意識を保っていられたのだと考えられます。
ボーイング737型機を操縦するライセンスは持っていなかったものの、英国の民間パイロットライセンスを持っていました。
プロドロモウは天井からぶら下がった酸素マスクを順番に使いながらコクピットへ向かうと、機長・副操縦士の意識の回復させるために酸素マスクを取り付けます。
管制塔への呼びかけもしましたが、効果はありませんでした。
プロドロモウは低酸素症の症状で意識が薄らぐ中、操縦桿を精一杯左に傾けたため、機体の進路はアテネ市街地から大きく逸れて北方の山岳地帯に墜落しました。
ヘリオス航空522便墜落事故では空軍の撃墜命令も
機内でたった一人で孤独な戦いを繰り広げたプロドロモウも、他の多くの乗客、乗員とともにアテネ山中で息絶えました。
その一方で、ヘリオス航空522便がまだ墜落をする前、上空を飛び続けていたころギリシャ空軍のF-16が522便に接近し機内の様子を伺っていました。
ギリシャの領空に到着したヘリオス航空522便に管制センターが呼びかけても反応がなく機体の高度も一向に下げないため、不審に思ったギリシャ空軍が戦闘機を派遣していたのです。
銭湯気温パイロットは、ヘリオス航空522便のコクピットで機長・副操縦士が意識を失って倒れているのを目視。
さらにそこに向かうで誰かを発見したそうですが、おそらくプロドロモウだったみて間違いないでしょう。
ヘリオス航空522便があと5分でもアテネ市街に向けて飛行していたら、アテネの市街地への墜落を回避するために飛行機を撃ち落とす必要があったと、軍の関係者が後に話しています。
ヘリオス航空522便墜落事故で気圧低下の原因は?
事故後の詳細な調査で、ヘリオス航空522便墜落事故の全貌が明らかになっています。
今回の事故の原因は
離陸前点検の不備(整備士によるスイッチの戻し忘れ)
機長・副操縦士らパイロットによる見落とし
気圧低下の警報音がは離陸警報装置と全く同じ
客室乗務員の思い違い
という4つが重なったことです。
その日の朝、ヘリオス航空522便の機体がロンドンから到着していますがその時の乗務員からドアのシールが凍結していることと、右後尾のサービスドアから異音がすることが報告されていました。
そのためドアの全面点検に加えて、バルブの加圧漏れのチェックも行われています。
バルブの点検では、機内を航行時と同じ気圧にするために空気を取り込むバルブをマニュアルモードにし、空気を取り込みます。
点検が終わったらバルブを開けて、空気を排出した後バルブをオートに戻します。そうすることで航行中でも自動で機内の気圧を一定にキープしてくれるのです。
ところが整備士はバルブをオートモードに戻すことを忘れてしまい、他の誰もがバルブがマニュアルモードになっていることには気がつきませんでした。
点検終了後、機長・副操縦士らパイロットがコクピットに入りますが、飛行前の手順、出発後、離陸後の3回に分けて機内の加圧をチェックすることになっていたものの、バルブがオートモードになっていると思い込み、マニュアルモードにセットされていることに気づかないまま、離陸の準備に取り掛かってしまいました。
ヘリオス航空522便は9時7分定刻通り、キプロスの空港を離陸しますがバルブがマニュアルモードなので機内の気圧は低下を始め警報も作動しますが、
気圧の低下を知らせる警報の音は離陸警報装置と全く同じ音だったため、結局、バルブがマニュアルになっていることに誰一人として気づくことはできませんでした。
ヘリオス航空522便では12,040フィート(3,670メートル)を通過したところで、機内の気圧定価による影響で機内高度警告の警告音がなりますが、
客室乗務員はこれを離陸準備が整っていないことを知らせる「離陸態勢警告」と勘違いし、やはり大して気に留めることはなかったようです。
実は、ヘリオス航空522便の機長がまだ低酸素症で失神する前に機内での様々な以上に関して地上管制とやり取りをしていて、
その中では整備士(加圧漏れチェックを行っていた人)からも「”加圧バルブがオートモードに設定されていますか?」と確認をしていました。
ところが、すでに低酸素症の初期症状を感じ始めていた機長は、その質問を無視してしまい、これが機体との最後の交信となったそうです。
ヘリオス航空522便墜落事故の影響
「ヘリオス航空522便墜落事故」は大きな衝撃を持って世界に報道されると同時に事故原因の究明により、二度と同じ事故が起きないように航空業界では点検に関する様々な見直しが行われ整備マニュアルが改正されました。
アメリカの連邦航空局は、同国で登録されている事故機と同型のボーイング737型航空機に二つの追加コックピット警告灯を取り付けることを義務付けています。
また、機内の酸素マスクが落下した際にも直ちにコクピットに報告に行く義務も課せられました。
ヘリオス航空522便墜落事故当時は酸素マスクが落下してもパイロットが知ることはありませんでした。それも異常に気が付くが遅れた一因だと言えます。
ヘリオス航空522便墜落事故のクルー(乗務員)について
機長はハンス・ユルゲン・メルテン(59歳のドイツ人契約パイロット)で、ヘリオスが休日のフライトのために雇ったパイロットです。一等航海士はパンポス・チャラランブス氏で、51歳のキプロス人パイロットで、過去5年間ヘリオスの専属パイロットを務めていました。彼のキャリアを通しての飛行時間は7,549時間で、そのうち3,991時間がボーイング737での飛行でした。
副官のパンポス・チャランブス氏(51歳)はキプロス出身のパイロットで、過去5年間ヘリオス航空に勤務していました。彼はキャリアの中で7,549時間のフライトを経験しています。チーフパーサーは、キプロス在住のギリシャ国籍のLouisa Vouteriさん(32歳)でした。彼女は病気の同僚の代わりを務めていました。