華族の現在について。
廃止された日本の社会階級制度である華族制度では貴族院への参加や世襲財産など、さまざまな特権が与えられていましたが現在は？
明治維新後、天皇家に仕えた公家や旧大名、そして国家に貢献した勲功者に爵位が与えられ、華族として認定されましたが、末裔はなぜ金持ちなんでしょうか？
華族とは？
華族とは、明治時代から昭和初期の日本に存在した貴族制度、およびその制度によって認められた貴族のことです。 華族制度は、主に江戸時代以前の公家、武家（将軍家や大名家など）、琉球王国の王族が移行したものでした。 加えて、明治維新などで功績のあった人物やその子孫も華族に加えられ、「新華族」と呼ばれました。 皇族や朝鮮王室は華族よりも高い身分とされ、華族には含まれませんでした。
華族制度は、明治維新後の社会構造の変化の中で生まれました。 当時の日本では、封建的な身分制度が廃止され、「四民平等」が掲げられていましたが、江戸時代の支配階級であった武士や公家の立場は不安定になっていました。 特に、版籍奉還によって世襲の封建領主としての地位を失った旧藩主（諸侯）たちの動揺を抑えるため、明治政府は彼らに新たな身分を保証する必要に迫られました。
そこで、政府は諸侯たちの処遇と、天皇を中心とした新たな国家体制の構築を目的として華族制度を創設しました。 これは、旧藩主層に対して、経済的な保障を与えるとともに、政治的な発言力も一定程度保障するものでした。 具体的には、華族には爵位が与えられ、貴族院議員への任命などの特権が認められました。 また、経済的な基盤を維持するために、政府から家禄に代わる金銭や公債が支給されました。
しかし、華族制度は、身分制度を否定する「四民平等」の理念に反するものとして、批判も少なくありませんでした。 例えば、自由民権運動を率いた板垣退助は、華族制度に反対し、自身も爵位を辞退しています (最終的には天皇の意向で伯爵位を受爵したが、一代限りで返上)。
華族の爵位
華族は、明治時代から昭和初期の戦前まで日本に存在した貴族制度、およびその制度によって貴族とされた人々のことです。 華族には、「公爵」「侯爵」「伯爵」「子爵」「男爵」の5つの爵位が存在しました。 爵位は、皇室と国家への忠誠を誓うことを条件に与えられ、家の男性戸主のみが世襲できました。 女性は爵位を得られませんでしたが、跡継ぎの男子が立てば爵位を得ることができました。
爵位の決定基準
- 公家の場合: 朝廷における家格が基準とされました。
- 武家の場合: 一部の例外（徳川将軍家・御三家・御三卿）を除き、家格は無視され、廃藩置県時の領地の収入を基準とされました。
- 維新の功労者: 明治維新とその後の功績により、本来の基準よりも高い爵位が授けられるケースもありました。
例：長州藩主家の毛利家は本来は侯爵クラス、公家の岩倉家は伯爵クラスでしたが、維新前後の功績によりいずれも公爵となりました。
華族の特権
- 財産: 華族の財産は保護され、他者から差し押さえられず、子孫に相続されました。
- 政治: 華族は貴族院議員になることができ、選挙で選ばれなくても政治に参加できました。
- 教育: 華族は、入学試験なしで華族学校（現在の学習院）に入学・進学できました。
華族になるルート
- 江戸時代以前に身分の高い公家だった
- 江戸時代以前に身分の高い武士だった（徳川家、大名など）
- 国家に大きな貢献をした人物とその子孫 例：伊藤博文、大久保利通、木戸孝允の子
華族の主な苗字・末裔
昭和22年5月15日に参内した旧華族
■公爵 7名
島津忠重 伊藤博精 鷹司信輔 徳大寺実厚 岩倉具栄 二条弼基 桂広太郎
■侯爵 10名
徳川義親 佐佐木行忠 黒田長礼 鍋島直泰 野津高光 中御門経恭 山階芳麿 四条隆徳 前田利建 佐竹義栄
■伯爵 28名
林博太郎 佐野常羽 黒田清 阿部正直 柳原博光 坊城俊良 広橋真光 山本清 徳川宗敬 大木喜福 宗武志 溝口直亮 樺山愛輔 室町公藤 正親町公和 ニ荒芳徳 広沢真吾 後藤一蔵 上杉憲章 南部利英 三条西公正 香川敬男 壬生基泰 酒井忠博 小笠原忠統 松平頼明 東久世通忠 島津忠韶
■子爵 83名
武者小路公共 大河内輝耕 秋月種英 岩下家一 八条隆正 松平忠寿 松平乗統 富小路隆直 北小路三郎 松平定晴 大島陸太郎 安藤信昭 本多忠晃 交野政邁 大久保忠言 井上匡四郎 今城定政 西大路吉光 立花種忠 谷儀一 白川資長 戸沢正己 秋田重孝 奥田直元 三室戸敬光 土岐章 波多野二郎 柳沢光治 大久保教尚 舟橋清賢 高木正得 加納久朗 錦小路頼孝 渡辺武 綾小路護 北条雋八 石井隆臣 松平銑之助 石山基弘 森可久 大久保寛一 吉田良兼 花房孝太郎 風早公武 青木重夫 井上正鑑 稲垣重厚 大迫貞矩 松平康春 内藤政光 京極高脩 梅渓通虎 伊集院兼高 入江為常 内藤政道 松平頼庸 七条光明 堤経長 内藤頼博 三浦矢一 柳生重五 大迫尚一 久松定秋 鳥居忠博 稲垣長賢 堀田義正 三宅直胖 阿部正友 小笠原光泰 高松実忠 品川清太郎 芝山信豊 一柳直俊 木下利福 黒田文紀 毛利元靖 石井太郎 牧野忠永 井上勝英 伊達定宗 山尾信一 池田政忠 東坊城元長
■男爵 49名
安保清種 東久世秀雄 向山均 飯田精太郎 矢吹省三 三須精一 松平外与麿 関義寿 大蔵公望 山内豊政 久保田敬一 有地藤三郎 宍戸功男 周布兼道 金子吉忠 伊江朝助 高崎弓彦 万里小路元秀 佐竹義履 徳川誠 内海勝二 肝付兼英 林安 梨羽時介 新田義美 岡俊二 益田兼施 一条実基 都筑忠春 有坂純一 片岡藤太 千秋季孝 永山盛綱 橋元正一 鶴殿家勝 岡内重清 岩村一木 渡辺修二 八代五郎造 尾崎忠孝 沢宣一 藤枝雅脩 森村市左衛門 佐竹義利 四条隆貞 浅野忠允 本堂親威 川崎寛正 徳川喜堅
注：204名というのは宮内省の爵位課長であった酒巻芳男氏の『華族制度の研究』（霞会館）によるが、実際には上の177名しか記録されていない。
華族の現在・苗字は？お嬢様の現在は？
華族制度は、戦後の日本国憲法によって廃止されました。 しかし、かつて華族であった家系の子孫は、現在も政界、財界、学界など、様々な分野で活躍しています。
一部の旧華族は、その知名度を生かして、財団の代表や企業の顧問などに就任しています。 例えば、旧大大名系の華族は、多くの財産を所有しており、企業からその知名度を求められることが多いようです。
また、旧華族の中には、神社や皇室関係の仕事に就いている人も多く見られます。 有名な神社の宮司を務めている例もあります。 特に、神式葬儀を行う家系である「斎家」が多いことから、神社関係の仕事に就くケースが多いようです。
政治家、学者、芸術家、実業家など、多岐にわたる分野で活躍していることがわかります。
また、「霞会館」のように、旧華族によって設立された団体も現在も存在しています。 霞会館は、旧華族会館として設立され、現在も旧皇族や旧華族の会員によって構成されています。
霞会館は、旧華族会館を前身とする一般社団法人です。 元々は明治7年（1874年）に浅草で「華族会館」として発足し、その後、旧鹿鳴館への移転を経て、霞が関に移転、1967年に現在の場所に至りました。会員資格は皇族、華族の当主と、将来当主となる20歳以上の長男に与えられます。 当主の夫人や令嬢も利用できますが、原則として会員の許可がない限り、一般の人は利用できません。 霞会館は日本の伝統文化の継承を推進しており、雅楽の講習会などが行われています。 毎年1月には新年会、6月には創立記念日、10月には明治天皇の御光臨記念日が開催され、会員が一堂に会します。
旧華族は、その歴史的背景や社会的な影響力から、現在も日本の社会において特別な存在として認識されています。
華族の末裔はなぜ金持ち？
華族の子孫に裕福な人が多い理由は、主に以下の3つの要因が考えられます。
- 経済的な基盤の継承: 戦後の財産税により華族は多くの資産を失ったものの、旧大大名系の華族は依然として多くの財産を保有しており、その経済的な基盤は子孫に受け継がれているケースが多いです。 これらの財産は、現在のビジネスや社会活動の基盤となっている可能性があります。
- 社会的ネットワークの活用: 華族は、歴史的に政治、経済、文化など、様々な分野で指導的な役割を担ってきました。その過程で築かれた広範な人的ネットワークは、子孫の代にも受け継がれ、ビジネスや社会活動において有利に働く可能性があります。例えば、企業は旧華族の知名度をビジネスに活用するために、財団の代表や企業顧問への就任を依頼することがあります。
- 教育・教養レベルの高さ: 華族は、その社会的な責任を果たすため、高いレベルの教育・教養を身につけることが求められました。特に、明治時代以降は西洋文化の導入にも積極的に取り組み、子弟を海外留学させるなど、国際的な視野を育てることにも熱心でした。 このような教育・教養は、子孫の世代に受け継がれ、彼らが社会の様々な分野で活躍する上で有利に働いている可能性があります。
華族の子孫は政治家、学者、芸術家、実業家など、多岐にわたる分野で活躍していることがわかります。
しかしながら、 華族の子孫だからといって必ずしも裕福であるとは限りません。
戦後、経済的な困難に直面した華族も少なくありませんでした。 また、 個人の能力や努力も、経済的な成功に大きく影響します。
総じて、華族の子孫に裕福な人が多い背景には、歴史的背景、社会的な特権、そして個人の努力など、様々な要因が複雑に絡み合っているといえます。
まとめ：華族の現在・苗字は？末裔はなぜ金持ち？お嬢様の現在は？
明治維新により、それまでの身分制度（武士・農民・職人・商人）は廃止され、「四民平等」が掲げられました。 しかし、江戸時代までの支配階級であった公家や武家（将軍家・大名家等）の処遇は大きな問題となりました。そこで、彼らの動揺を抑え、天皇を中心とした新しい国家体制への円滑な移行を図るために、華族制度が誕生しました。
これは、諸侯が私有する領地人民を天皇に奉還させ、彼らを地方長官化させた「版籍奉還」に対する、一種の妥協策でもありました。 つまり、世襲の封建領主としての地位を失う諸侯へ、別の形で高い身分を保障する意味合いがあったのです。
華族制度の概要
華族は、主に旧公家・旧武家・旧琉球王族から構成され、新たに爵位が与えられました。 爵位は、「公爵」「侯爵」「伯爵」「子爵」「男爵」の5段階で、皇室と国家への忠誠を誓うことが条件でした。
旧公家に対しては朝廷での家格が、旧武家に対しては廃藩置県時の領地の収入が、爵位決定の基準となりました。 ただし、明治維新やその後の功績によって、本来の基準よりも高い爵位が授けられるケースも存在しました。
例えば、長州藩主家の毛利家は本来侯爵クラス、公家の岩倉家は伯爵クラスでしたが、維新前後の功績によりいずれも公爵となっています。 一方で、歴史ある家柄でも、出雲大社の千家家のように男爵にとどまる例もありました。
華族の特権
華族には、以下の3つの特権が代表的なものとして挙げられます。
- 財産: 華族の財産は保護され、他者から差し押さえられず、子孫に相続されました。
- 政治: 華族は、貴族院議員になることができ、選挙で選ばれなくても政治に参加できました。
- 教育: 華族は、入学試験なしで華族学校（現在の学習院）に入学・進学できました。
華族社会の特徴
華族社会では、家同士の婚姻関係で築かれる社会ネットワークである閨閥が重要な役割を果たしました。 基本的に華族同士での結婚が基本でしたが、許可さえあれば華族以外との結婚も可能でした。
また、華族は「皇室の藩屏」と呼ばれ、皇室を守る存在と位置付けられていました。 これは、民衆がどのような変革を起こすか分からないという、当時の民衆不信・愚民視を背景に、天皇を守る「防波堤」として華族に期待する考え方があったためと考えられます。
華族制度への批判
明治政府は「四民平等」を掲げていたにも関わらず、特権階級である華族制度を作ったことに対する批判は少なくありませんでした。 例えば、「自由民権運動」の指導者である板垣退助は、国会開設に尽力した功労者でしたが、華族制度には反対の立場を表明し、爵位の授与を2度辞退しています。
華族のその後
華族制度は、第二次世界大戦後の1947年に廃止されました。 戦後、旧華族の中には、財産を失ったり、没落したりする者もいましたが、政界、経済界、文化人など、様々な分野で活躍する子孫もいます。
例えば、政治家では麻生太郎元首相、細川護熙元首相、安倍晋三元首相などが華族の出身です。 また、文化人としては、作家の武者小路実篤、歌人の柳原白蓮などが知られています。
現在でも、旧華族の子孫の中には、家督を継いだり、家業を継承したり、あるいは家名にちなんだ財団法人を運営するなど、その名跡を今に伝えています。
