レ・ミゼラブルについてあらすじを短く簡単に解説。
時代を超えて愛されるヴィクトル・ユーゴー名作小説『レ・ミゼラブル』の伝えたいことは？
レ・ミゼラブルとは？
「レ・ミゼラブル」は、1862年にフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーによって書かれた長編小説です。 この作品は、19世紀前半のフランスを舞台に、ナポレオン戦争後の混乱期から七月革命後の1833年までの激動の時代を生きていく人々の姿を描いています。
登場人物
- ジャン・ヴァルジャン: 物語の主人公。パンを盗んだ罪で19年間服役した後、ミリエル司教の慈悲に触れ、改心を誓います。 その後、マドレーヌと名前を変え、工場経営者として成功し市長になりますが、過去に囚われます。
- コゼット: ファンティーヌの娘。 幼い頃に母親と生き別れ、テナルディエ夫妻の宿屋で虐待を受けながら育ちます。 ヴァルジャンに救い出され、父親同然の愛情を注がれて成長し、青年マリウスと恋に落ちます。
- ミリエル司教: ディーニュの司教。 貧しい人々を救済することに生涯を捧げ、質素な生活を送る「聖人」として人々に慕われています。 ヴァルジャンを改心させたことをきっかけに、物語全体に大きな影響を与えます。
- ジャヴェール警部: 法と正義を絶対視する警察官。 過去に囚人であったヴァルジャンを執拗に追跡します。 しかし、物語が進むにつれてヴァルジャンの行動と自らの正義の間で葛藤するようになり、最後はセーヌ川に身を投げてしまいます。
- ファンティーヌ: コゼットの母親。 恋人に捨てられ、貧困のため娼婦に身を落としてしまいます。 ヴァルジャンにコゼットを託しますが、力尽き、若くして亡くなります。
- マリウス: パリで法律を学ぶ学生。 共和派の秘密結社「ABCの友」に参加し、革命運動に身を投じます。 成長したコゼットと出会い、恋に落ちます。
特徴
- 社会の矛盾と人間の苦悩を描写: 「レ・ミゼラブル」は、当時のフランス社会が抱えていた貧困、格差、差別などの問題をリアルに描き出しています。 登場人物たちは、そうした社会の矛盾に翻弄され、苦悩しながらも懸命に生きています。
- 愛と救済の物語: 過酷な運命に翻弄される登場人物たちですが、その中で描かれる愛と慈悲の心は、読者に希望を与えます。 ミリエル司教の無償の愛、ヴァルジャンのコゼットへの父性愛、マリウスとコゼットの恋愛など、様々な形の愛が描かれています。
- 長編小説: 「レ・ミゼラブル」は、5部構成、全365章からなる大作です。 登場人物も多く、物語の舞台もパリやその周辺など、広範囲にわたります。
「レ・ミゼラブル」は、フランス文学を代表する傑作として、世界中で愛され続けています。 小説だけでなく、ミュージカルや映画など、様々な形で翻案されています。
レ・ミゼラブル短く簡単なあらすじ
ジャン・ヴァルジャンは、パンを盗んだ罪で19年間服役した元囚人です。 出所後、ミリエル司教の慈悲に触れ改心し、マドレーヌと名前を変えて工場経営者、そして市長として成功します。
しかし、過去を知るジャヴェール警部が現れ、正体を疑われます。 ヴァルジャンは、工場で働くファンティーヌという女性が、娘コゼットを預けた宿屋の夫婦から搾取されていることを知り、救いの手を差し伸べようとします。
しかし、ジャヴェールに正体を知られそうになり、ファンティーヌはショックで亡くなってしまいます。 ヴァルジャンは、ファンティーヌとの約束を守るため、コゼットを引き取ってパリで生活を始めます。
成長したコゼットはマリウスという青年と恋に落ちますが、ヴァルジャンの過去が二人の仲を阻みます。
当時のフランスは革命の機運が高まっており、マリウスもその渦中に巻き込まれていきます。
ヴァルジャンはコゼットとマリウスを救うために奔走し、最後は二人に看取られながら息を引き取ります。
レ・ミゼラブル伝えたいことは？
「レ・ミゼラブル」は、単なる物語ではなく、作者ヴィクトル・ユーゴーが読者に伝えたい深いメッセージが込められた作品です。 この壮大な物語を通して、ユーゴーは「人間の善性と救済の可能性」を力強く訴えかけています。
登場人物たちの多くは、貧困、差別、裏切りなど、過酷な運命に翻弄される「悲惨な人々」として描かれています。 主人公ジャン・ヴァルジャンもまた、パンを盗んだ罪で19年間もの間服役し、社会から疎外された存在でした。 しかし、彼はミリエル司教との出会いをきっかけに改心を決意し、その後の人生を善行に捧げる道を選びます。
彼の生き様は、どんなに過酷な過去を持つ人間であっても、真の善に出会い、自らの意志で道を切り開くことで、更生し、魂の救済を得られることを示唆しています。 これはバルジャンだけでなく、彼を取り巻く様々な登場人物たちにも共通するテーマです。
また、作品全体を通して「愛と慈悲の力」が重要なテーマとして描かれています。 ミリエル司教の無償の愛は、バルジャンの心を大きく変え、彼を更生の道へと導きました。 バルジャン自身もまた、ファンティーヌやコゼットへの父親としての愛情、マリウスへの慈悲の心などを通して、愛と慈悲の大切さを体現しています。
「レ・ミゼラブル」は、19世紀前半のフランス社会を背景に、革命の理想と現実、社会の矛盾、人間の光と影を鮮やかに描き出しています。 しかし、ユーゴーはこうした厳しい現実を描写する一方で、人間の善性と愛の力を信じ、読者に希望を提示しようとしたのではないでしょうか。 「レ・ミゼラブル」というタイトルは、単に「悲惨な人々」という意味ではなく、苦難の中でも希望を捨てず、愛と慈悲の心を持って生きる人々への賛歌として解釈できるかもしれません。
レ・ミゼラブル時代背景は？
「レ・ミゼラブル」で物語の舞台となるのは19世紀前半のフランスで、ナポレオン戦争後の混乱期から七月革命（1830年）を経て、ルイ・フィリップ王の時代における1833年までの約18年間が描かれています。
作品内には、ナポレオン1世の失脚から王政復古の時代、そして七月革命後のルイ・フィリップ王の七月王政時代へと移り変わる、フランス社会の大きな変化が反映されています。主人公ジャン・ヴァルジャンは1796年にパンを盗んだ罪で逮捕され、1815年に出獄するまでの19年間を刑務所で過ごします。この空白の19年間は、ナポレオンが台頭し、ヨーロッパを席巻した後、失脚するまでの期間と重なります。作者のユーゴーは、貧しい境遇のバルジャンと、裕福な環境で権力を握ったナポレオンを対比させることで、当時のフランス社会における貧富の差を浮き彫りにしていると考えられています。
「レ・ミゼラブル」では、社会の底辺で生きる人々の苦悩や、革命の理想と現実のギャップ、そして当時の社会情勢や庶民の生活が克明に描かれています。
- 1832年の六月暴動は、物語終盤のクライマックスとして描かれています。これは、ルイ・フィリップ体制に不満を持つ共和主義者や労働者階級が蜂起したものの、わずか2日間で鎮圧された史実です。
- ラマルク将軍の死と葬儀は、六月暴動のきっかけとして描かれています。ラマルク将軍は貧困層の人権や政治的自由を訴え、民衆から支持を集めていましたが、コレラによって亡くなります。彼の死と質素な葬儀は、民衆の王政への不満を爆発させるきっかけとなりました。
「レ・ミゼラブル」は、こうした歴史的背景を土台に、愛と憎しみ、正義と悪、貧困と革命といったテーマが複雑に絡み合いながら展開される壮大な物語です。登場人物たちの運命を通して、当時のフランス社会が抱えていた光と影を鮮やかに描き出しています。
レ・ミゼラブルの詳しいストーリー
ジャン・バルジャンの生涯
主人公ジャン・バルジャンは、パンを盗んだ罪で19年間服役していた元囚人です。 仮出獄後も、前科者への風当たりは強く、なかなか更生の道を歩めずにいました。 そんな彼を変えたのが、ミリエル司教との出会いです。 バルジャンは司教の家に泊めてもらった際、銀食器を盗んで逃げますが、すぐに捕まってしまいます。 しかし司教は彼を咎めずに、むしろ「正直な人間になるために」と銀の燭台まで渡して許してくれたのです。 この慈悲に触れたバルジャンは、心を入れ替え、新たな人生を生きようと決意します。
バルジャンはマドレーヌと名前を変え、工場を経営して成功、やがて市長にまでなります。 しかし、彼を執拗に追うジャベール警部によって過去が暴かれそうになり、再び逃亡生活を送ることになります。
逃亡の途中、バルジャンはファンティーヌという女性とその娘コゼットの悲惨な境遇を知ります。 ファンティーヌはバルジャンの工場で働いていましたが、私生児であることがバレて解雇され、娘をテナルディエという悪徳夫婦に預けなければなりませんでした。 そして、コゼットを養育費目的で搾取するテナルディエ夫婦から、バルジャンはコゼットを買い取り、父親として育てていくことを決意します。
コゼットとマリウス、そして革命の渦
バルジャンはコゼットを連れてパリに逃亡し、パリの修道院に身を隠しながらコゼットを育てます。 コゼットは美しく成長し、マリウスという青年と恋に落ちます。 しかし、当時のパリは革命の機運が高まっており、マリウスもその渦中にいました。
マリウスは、共和主義を掲げる学生組織「ABCの友」に参加し、六月暴動に身を投じます。 バルジャンは、そんなマリウスとコゼットの愛を知り、二人の幸せを願いながらも、自分の過去と向き合わざるを得ない状況に追い込まれていきます。
それぞれの「レ・ミゼラブル（悲惨な人々）」
「レ・ミゼラブル」には、様々な境遇の登場人物が登場します。 貧困や差別、愛する者との別れなど、誰もが過酷な運命に翻弄されます。
- ファンティーヌ: 愛する男に裏切られ、娘のために身を落としながらも、非業の死を遂げる。
- テナルディエ夫妻: 金のために悪事を働き、我が子であるガヴローシュすらも見捨てる。
- エポニーヌ: テナルディエの娘。マリウスに片思いをし、彼のために自分の命を犠牲にする。
- ガヴローシュ: テナルディエの息子。浮浪児としてたくましく生きるも、六月暴動で銃弾に倒れる。
- ジャベール警部: 法と正義に固執するあまり、バルジャンの慈悲に触れたことで自身の信念が揺らぎ、最後は自殺という道を選んでしまう。
愛と救済、そして「神の正義」
ジャン・バルジャンは、ミリエル司教の愛によって救われ、彼自身もまた、コゼットやマリウスを救うために自己犠牲を払います。 しかし、彼の行動は必ずしも報われるとは限らず、むしろ新たな悲劇を生み出すことさえあります。
「レ・ミゼラブル」は、「愛」と「救済」をテーマとしながらも、人間の弱さや社会の矛盾を容赦なく描き出しています。 その中で、バルジャンは「神の正義」を信じ、苦難の人生を歩み続けます。 彼が最後に見た光は、ミリエル司教から託された銀の燭台の光でした。 それは、彼自身の贖罪と希望の象徴でもあったのかもしれません。
まとめ：レ・ミゼラブル短く簡単なあらすじ｜伝えたいこと・時代背景は？
「レ・ミゼラブル」は、1862年に発表されたヴィクトル・ユーゴーの長編小説で、1815年から1833年までのフランスを舞台に、さまざまな登場人物の人生が交錯します。
ジャン・バルジャン
物語は、パンを盗んだ罪で19年間服役していたジャン・バルジャンが出所するところから始まります。ミリエル司教の慈悲に触れたバルジャンは改心を誓い、マドレーヌと名を変えて工場を経営し、市長にまでなります。 しかし、彼を執拗に追うジャベール警部によって正体が疑われ始めます。
バルジャンは、ファンティーヌという女性とその娘コゼットの境遇を知り、彼女たちを救おうとします。 ファンティーヌは、バルジャンの工場で働いていましたが、私生児であることが露見し解雇され、娘をテナルディエという悪徳夫婦に預けなければなりませんでした。 バルジャンは、コゼットをテナルディエ夫妻から救い出し、父親として育てます。
成長したコゼットは、マリウスという青年と恋に落ちます。 マリウスは、革命運動に参加しており、その中でバルジャンはマリウスを救うために命がけで行動します。最終的にコゼットとマリウスは結婚します。
バルジャンは、自分の正体が二人の幸せを阻むと考え、コゼットの前から姿を消します。しかし、マリウスはバルジャンが命の恩人であったことを知り、コゼットとバルジャンを探し出します。
バルジャンは、コゼットとマリウスに看取られながら息を引き取ります。
主な登場人物とその役割
- ミリエル司教: バルジャンを改心させた慈悲深い司教。
- ジャベール警部: 法に忠実で、バルジャンを執拗に追う警部。
- ファンティーヌ: コゼットの母親。
- テナルディエ夫妻: コゼットを預かり、彼女を虐待する悪徳夫婦。
- コゼット: ファンティーヌの娘。
- マリウス: コゼットと恋に落ちる青年。
- エポニーヌ: テナルディエの娘で、マリウスに片思いをしている。
- ガヴローシュ: テナルディエの息子で、浮浪児。
作品背景
「レ・ミゼラブル」は、ナポレオン戦争後のフランスを舞台にしており、1832年の六月暴動も描かれています。
作中に登場する「民衆の歌」
「民衆の歌」は、六月暴動のきっかけとなるラマルク将軍の葬列で歌われました。
「レ・ミゼラブル」というタイトルの意味
「レ・ミゼラブル」は、「悲惨な人々」という意味です。
備考
ジャン・バルジャンとジャベール警部のモデルとなった人物として、フランソワ・ヴィドックが挙げられています。
