哲学者として知られるフリードリヒ・ニーチェの死因は？
1889年、突然精神に異常をきたし、その後10年間を精神病院で過ごすことになりますがニーチェの死因は、現在も議論の的となっています。
ニーチェの死因はなぜ発狂？梅毒？脳腫瘍？
リードリヒ・ニーチェは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したドイツの哲学者です。彼の死因についてはさまざまな説がありますが、最も有力なのは梅毒という病気が原因であるという説です。しかし、他にも脳腫瘍や肺炎が直接の死因であった可能性が考えられています。
■ニーチェの死因に関する主な説
梅毒説
脳腫瘍説
哲学が精神に影響を与えた説
ニーチェの死因１梅毒説
梅毒は、性的な接触などによってうつる細菌感染症です。この病気は、感染局所や全身に赤い発疹ができることが特徴です。病状が進行すると、脳や神経に影響を及ぼし、精神錯乱や最終的には死に至ることがあります。
当時の医学知識では、梅毒が精神崩壊を引き起こすと信じられており、実際にニーチェの症状も梅毒による進行性麻痺（脳梅毒）と似ているとされています。ニーチェは、バーゼルの精神科病院において「進行性麻痺」と診断されており、この診断が梅毒を指していると考えられます。
ニーチェの死因２脳腫瘍説
一部の専門家は、ニーチェの症状が梅毒だけでは説明できないと考え、脳腫瘍が原因であった可能性を指摘しています。脳腫瘍は脳の中にできる異常な細胞の塊で、これが神経や脳の働きを圧迫し、精神錯乱や身体の機能不全を引き起こすことがあります。
ニーチェの死因３哲学説
ニーチェの精神崩壊について、一部の学者は彼の哲学的思想が原因であったと考えています。ニーチェは、従来の宗教的価値観や道徳を否定し、新しい価値観を提唱する過程で、精神的な負荷が大きかったとされています。特に、ジョルジュ・バタイユやルネ・ジラールのような学者は、ニーチェの哲学が彼自身の精神に大きな影響を与えたと考えています。
ニーチェの死因と精神崩壊の経緯
ニーチェは1889年1月3日にトリノで精神崩壊を起こしました。彼は街中で鞭打たれている馬を見て、それを守ろうと馬に駆け寄り泣き崩れました。この出来事をきっかけに彼の精神状態は急速に悪化しました。その後、彼は友人たちに奇妙な手紙を書き送るようになり、精神病院に入院することになりました。
手紙の一部には次のような内容が含まれています：
「私はカイアファを拘束させてしまいました。昨年には私自身もドイツの医師たちによって延々と磔（はりつけ）にされました。ヴィルヘルムとビスマルク、全ての反ユダヤ主義者は罷免されよ！」
「私が人間であるというのは偏見です。…私はインドに居たころは仏陀でしたし、ギリシアではディオニュソスでした。…アレクサンドロス大王とカエサルは私の化身ですし、ヴォルテールとナポレオンだったこともあります。…リヒャルト・ヴァーグナーだったことがあるような気もしないではありません。…十字架にかけられたこともあります。…愛しのアリアドネへ、ディオニュソスより」
このような手紙からも、ニーチェの精神状態が非常に不安定であったことがわかります。
ニーチェは精神崩壊後、完全に精神病院に収容されることになりました。最初はバーゼルの精神病院に入院し、その後、母親の看護のもとイェーナの病院に移されました。しかし、治療の効果はなく、1890年に退院した後、ナウムブルクの実家で療養生活を送りました。
彼の母親が亡くなった後、妹のエリーザベトが彼の世話をするようになりました。エリーザベトは兄の著作の管理を行い、ニーチェが理解不能な状態でも多くの訪問者に面会を許可していました。
ニーチェは1900年8月25日に肺炎を患い、55歳で亡くなりました。彼の遺体は故郷レッケンの教会で父親の隣に埋葬されました。
まとめ：ニーチェの死因はなぜ発狂？梅毒？脳腫瘍？
ニーチェの死因について、主な説とそれぞれの根拠は、
梅毒説: 当時最も有力だった説。ニーチェは若い頃に梅毒に感染し、それが脳に影響を与えて狂気に繋がったと考えられています。しかし、梅毒の症状とニーチェの症状には矛盾する部分もあり、確実とは言えません。
脳腫瘍説: 近年有力となっている説。脳腫瘍が進行し、精神症状を引き起こした可能性があります。しかし、ニーチェの死後に解剖が行われなかったため、確証はありません。
哲学による精神崩壊説: ニーチェ自身の哲学思想が、彼を精神的に追い詰めたという説。彼の過激な思想は、周囲の人々との摩擦を生み、彼自身を苦しめた可能性があります。
その他にも考えられる要因としては、
遺伝的要因: ニーチェの家族には精神疾患の患者がいたことから、遺伝的な要因が影響した可能性も考えられます。
過度な執筆活動: ニーチェは生涯を通して精力的に執筆活動を行い、それが精神的な負担となった可能性もあります。
当時の社会環境: 19世紀後半のヨーロッパは、社会的な変化や思想的な対立が激化していた時代です。そのような環境が、ニーチェの精神に影響を与えた可能性もあります。
