西成高校は大阪府大阪市西成区津守にある学校で、偏差値は37と決して進学校というわけではなくどちらかというと勉強が得意じゃない生徒が通う高校。
大阪府大阪市西成区が日本でも有数の貧困問題に直面する地域ということもあり、西成高校に関して以前にアメトーーク!の放送内容が問題となりテレビ朝日が公式に謝罪。
ただ西成高校は昔は確かに荒れていた時期があるのかもしれませんが、現在は反貧困学習を掲げて生まれ変わりつつあります。
西成高校はアメトーークで炎上→謝罪に
テレビ朝日系のバラエティー番組「アメトーーク!」は18日、2月14日放送の「高校中退芸人」に不適切な内容があったとして謝罪した。
大阪府立西成高校、西成地区についてのエピソードを紹介中に、事実と異なる内容や差別的な表現があったという。西成地区については「行かない方がいい地域」と差別を助長するような表現があった。
https://www.excite.co.jp/news/article/TokyoSports_1360332/
この時の出演者は下記の顔ぶれになります。
千原ジュニア(千原兄弟)
木下隆行(TKO)
紺野ぶるま
品川祐(品川庄司)
兼近大樹(EXIT)
原田公志(セバスチャン)
とも(ソノヘンノ女)
草薙航基(宮下草薙)
大吾(千鳥)※ゲスト
尾形貴弘(パンサー)※ゲスト
主に問題視されたのが自らが大阪府立西成高校に通っていたという芸人のソノヘンノ女・とも(仲村智美)さん。
ちなみに、ともさんは現役のキャバクラ嬢でもあり、お笑い芸人は副業とのこと。
ともさんは自分が西成高校に通っていた当時のことを振り返って
「椅子が机がつながってる理由は投げられないようにするため」
「窓がガラス素材でない理由はガラスだと割る人が多いから」
といった持論を展開していました。
他にも「トイレットペーパーを職員室に取りに行く理由は、盗まれるから」どの事例を不良生徒対策と紹介していたほか、
「当時9クラスあった学年が卒業時には(途中で問題を起こして退学する人が多く)5クラスになった」といったコメントをしていましたが、
後日、「事実と異なる内容や差別的な表現があった」として西成高校側が正式に抗議していました。
学校が荒れているような印象を植え付けられた視聴者からは「新1年生がいるのに、この時期に出すのはいい影響を与えない!」などと番組を批判する声が上がっていました。
西成高校のある西成区とは
大阪市の西成区全体がはそこまで治安が悪いという訳ではありません。
西成区には「日本唯一のスラム街」と称される「あいりん地区」があり、この地域が以前から非常に危険であると言われていました。
日雇い労働者や路上生活を余儀なくされている生活困窮者が多く暮らす地域で、「西成地区に行かない方がいい」という発言はおそらく、「あいりん地区」についてのイメージに基づいたものだと思われます。
一説によると在日コリアンや沖縄出身の方や、生活保護世帯も多く、男性の平均寿命は国内でもっとも短いというデータがあるとか。
あいりん地区は実際に行政の手が行き届いていないせいか、老朽化した家屋が密集しており、再開発が進む隣の阿倍野区とは対照的です。
あいりん地区の特徴を簡単にまとめると、
ホームレスが至る所にいる
日雇い労働者の街
覚せい剤取引の温床
犯罪者が身を寄せる場所として知られている
1泊500円から泊まれる安い宿(ドヤ)がある
といった、事実に混じって噂や都市伝説も絶えません。
西成高校の現在は反貧困学習
西成高校の山田校長は、「アメトーーク!」に限らず、同校の生徒たちは日常的に差別を受けているのだと、ネットメディアで明かしています。
例えば、卒業生が働くアルバイト先で学校名を聞かれた際に、「西成です」と答えただけで、「きちんと働かないのでは」といった偏見を持たれたり、ひどい言葉をかけられたりすることがあり、こうした偏見はなかなか減らないという。
日雇い労働者が多いことや、かつて被差別部落があったという歴史。確かに「西成には、地区として複合的な要素がある」と、山田校長。
だが、山田校長はこう続ける。「西成に育ったら、それは罪ですか?ということですよね。この地区に対する偏見や差別で苦しむ生徒たちに、『決してマイナスではないよ。レッテルが貼られた時、「何が悪いんですか?」と言い返せるようにしないと』と伝えたいんです」。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5cb9289de4b068d795cae443
西成高校はアメトーーク!の問題発言で炎上騒ぎに巻き込まれてしまった被害者ですが、関係者によると「今の西成高校、私の高校時代のときの教頭(中略)が校長になった頃から、血のにじむような努力で様々なことにチャレンジできる学校に変わっている」とのこと。
「夢を追いかけろ」、「がんばれ」と叱咤激励する教育をしてきました。しかし、生徒たちと向き合っていくなかで、今、求められているのは、「貧困」をしっかりと理解し、立ち向かえるおとなになるための教育ではないだろうかという考えにいたりました。そこで、2007年度より「反貧困」を軸にした総合学習のプログラムを組み、実践しています。
生徒たちの半数以上が毎日アルバイトをしなければ生活を維持できない状況
これまでは「やんちゃな子はやめていくんだよね」と、半ば仕方ないことと受け止めてきました。しかし、今は「やんちゃになるにはやんちゃになるだけの何かがあったのではないか」と、とらえています。「何か」をつきつめていけば困難を抱えた家庭環境があり、さらにつきつめていくと「貧困」があったという場合は少なくありません。
2007年度は「自らの生活を“意識化”する」、「現代的な貧困を生み出している社会構造に気づく」、「“西成学習”を通して、差別と貧困の関係に気づく」という3つの視点を念頭におき、テーマを設定しました。2008年度から「現在ある社会保障制度についての理解を深める」、「非正規雇用労働者の権利に気づく」、「究極の貧困である“野宿者”問題を通して生徒集団の育成をはかる」、「“新たな”社会像を描き、その社会を創造するための主体を形成する」の4点を加えた7つの視点としました。
http://www.jinken-osaka.jp/essay/vol68.html
西成高校は授業で使用している教材や生徒の感想をまとめた「反貧困学習 格差の連鎖を断つために」(解放出版社、1890円)を出版しています。
■本のあらすじ
3年間取り組んできた西成の生徒の実態に向き合った“反貧困学習”を教材としてまとめ、かつての「荒れた」学校現場を改革していく「西成高校再生」の取り組みを加えた中間報告。
目次 : 1 “反貧困学習”の教材―開かれた実践をめざして(生きる力をもつ子どもたち―ダッカのストリートチルドレン/ 「ネットカフェ難民」からセーフティーネットを考える/ 「ワーキングプア」からセーフティーネットを考える/ シングルマザーについて ほか)/ 2 チャレンジする西成高校―改革のめざすもの(ケース会議―生活を支える取り組み/ 「新しい社会で生き抜く方法」をめざして/ 新たな支援教育をめざして―「知的障がい生徒自立支援コース」の取り組み/ 西成教育フェスタ―希望と誇りを育む教育実践の交流 ほか)