「お控えなすって」とはどんな意味?
時代劇でよく「お控えなすって」というセリフを耳にしますがどんな意味で、どういう使い方をするんでしょうか?
マンガ「ワンピース」でも「海侠のジンベエ」が口上していましたが「お控えなすって」の全文は?
お控えなすっての口上の意味は?
「お控えなすって」の口上の意味について、まず昔の日本の宿場などにそこの土地を仕切る自警団とその取りまとめをする顔役がいました。
その殆どは役人ではなくあくまで個人レベルでその町の用心棒的な役割でよそ者から町を守っていたのです。
そこによそからの無宿人が通る時に顔役の所に敵意がない証として挨拶に行って使う口上で使っていた言葉が「お控えなすって」です。
「挨拶させてもらいますから聞いてください」という事です。
そして、相手が待ってくれたら、「さっそくのお控え、ありがとうござんす」と言って自己紹介して挨拶を言います。
「手前、生国と発しまするはドコドコでござんす、姓は市川、名は蟹蔵で……」のように続きます。
その時に時代劇で見るように手の平を上に向けてるのは、下手(したて)に出ていますという意味です。
その時挨拶を受ける方も相手の下手に対し礼をもって同じように手のひらを見せますが、片方の手は後ろにまわして、短刀を隠し持ち、相手の口上に不手際があればその場で切りかかっても文句は言えなかったのです。
この世界で「仁義を切る」と言いました。それが終わり、その家で寝泊りさせてもらい飯を食べさせてもらってた訳です。
それが今でも聞くことがある「一宿一飯」というものです。
無宿人は旅をしてますので、よその地で悪く言われたくないので客人として迎えてもてなす訳で、無宿人もその恩義を何かしたりして返したわけですよ。
その後、博徒(ヤクザ)、テキヤ、香具師(やし)などが仲間内で、初対面の時に交わす挨拶の冒頭にも使われるようになります。
ただ実際に仁義を切る、そのスタイルは明治の時代に入って、講談や歌舞伎、新国劇、映画といった創作のなかでつくられていったものであるということ、あのポーズも舞台やスクリーン上で「魅せる」ことに重きをおいた演出であるということである。確かに、初対面のヤクザ同士が挨拶を交わすことはあったものの、それはほかのふつうの人がする挨拶とあまり変わらないものであったろうということだ。そうすると、地域間のバリエーションもなにも、そもそもが創作なんだからありはしないっていうこと。
お控えなすっての口上の全文は?
お控えなすっての口上の全文について、
「手前(てめえ、てまえ)、生国(しょうごく)と発しまするは〇〇の生まれ、姓は〇〇、名は〇〇、人呼んで〇〇(あだ名、別称)と申します」
…というのが、基本型で、何を言ってるかというと「私はどこそこ生まれの〇〇です。よろしくお願いいたします」と言ってます。
「〇〇の生まれ」に色々な経歴を詰め込んで、自分の歴史、なぜ、この地にたどり着いたかを語るのが良くあるパターンです
「男はつらいよ」シリーズの寅さんでは次のような有名な口上があります。
「遅ればせの仁義、失礼さんでござんす。私、生まれも育ちも関東、葛飾柴又です。渡世上故あって、親、一家持ちません。カケダシの身もちまして姓名の儀、一々高声に発します仁義失礼さんです。姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します。西に行きましても東に行きましてもとかく土地土地のおあ兄さんおあ姐さんにご厄介をかけがちたる若僧です。以後面体お見しりおかれまして、恐惶万端引き立って、よろしく、おたの申します」
また『昭和残侠伝』(1965年/東映)では、
「手前、粗忽者ゆえ、前後間違いましたる節は、まっぴらご容赦願います。向かいましたるお兄いさんには、初のお目見えと心得ます。手前、生国は大日本帝国、日光 筑波 東北 関東は吹き降ろし。野州は宇都宮で御座います。稼業、縁持ちまして、身の片親と発しますは、野州 宇都宮に住まいを構えます、十文字一家三代目を継承致します坂本牛太郎に従います若い者で御座います。姓は風間、名は重吉。稼業、昨今の駆出し者で御座います。以後、万事万端、お願いなんして、ざっくばらんにお頼申します。」