2024年のパリパラリンピック女子マラソンでスペイン選手(エレナ・コンゴスト)が失格となった理由について。
3位のスペインのエレナ・コンゴスト選手がゴール直前に失格となり、道下美里選手が繰り上がって銅メダルを獲得しましたがなぜ失格になったんでしょうか？
スペイン選手(エレナ・コンゴスト)失格理由はなぜ？パリパラリンピック女子マラソン
パリパラリンピック女子マラソンにおけるスペイン選手失格と道下選手の銅メダル獲得について
2024年パリパラリンピック女子マラソン（視覚障害T12）において、当初3位でフィニッシュしたスペインのエレナ・コンゴスト選手は、競技規則違反により失格となりました。その結果、4位でゴールした日本の道下美里選手が繰り上がりで銅メダルを獲得しました。
コンゴスト選手の失格理由は、ゴール直前に伴走者と手を繋いでしまったためです。視覚障害T12クラスのマラソンでは、伴走者と選手はロープで繋がれており、競技規則で常にそのロープを握っていることが義務付けられています。コンゴスト選手は、ゴール直前に伴走者が足をつってよろめいた際に、とっさに手を握ってしまいましたが、この行為がロープを放す行為とみなされ、失格となってしまいました。
コンゴスト選手は、不正行為ではなく、転倒しそうな人を助けようとした人間の自然な行動が原因で失格になったと主張しています。しかし、競技規則ではロープを放す行為は認められておらず、結果的に失格処分が下されました。
一方、この失格により、4位でフィニッシュした道下選手が繰り上がりで銅メダルを獲得しました。道下選手は東京大会の金メダルに続き、3大会連続のメダル獲得となりました。
エレナ・コンゴスト(パリパラリンピック女子マラソン失格のスペイン選手)
エレナ・コンゴスト選手は、1987年9月20日生まれのスペインの陸上競技選手です。 彼女は進行性の視覚障害を持っており、T12/B2クラスに分類されます。
コンゴスト選手は、教師としても活躍しています。 2008年にはバルセロナのCastelldefelsに拠点を移し、2012年時点でも同地域に居住していました。 2011年には、Castelldefelsスポーツ賞において、最優秀障害者女性アスリート賞を受賞しています。 2013年には、スペインのスポーツ選手に贈られる勲章である「Real Orden al Merito Deportivo」の銀賞を受賞しました。 また、2013年には、サン・クガット・デル・バリェスのハイパフォーマンスセンター（CAR）に住んでおり、競泳選手のミレイア・ベルモンテ選手と同室でした。
コンゴスト選手は、倫理的、環境的、そして健康上の理由から、7年間ビーガンを続けています。 彼女は、ビーガンになったことで、貧血、消化器系の問題、その他の病気が著しく改善したと語っています。
コンゴスト選手は、2004年、2008年、2012年、2016年、2024年の夏季パラリンピックに出場しています。 2012年のロンドン大会では1500メートルで銀メダル、2016年のリオデジャネイロ大会ではマラソンで金メダルを獲得しています。
道下美里がパリパラリンピック女子マラソンのスペイン選手失格で繰り上げ銅メダル
道下美里選手は、1977年1月19日生まれの日本の陸上競技選手です。彼女は視覚障害を持つマラソンランナーとして活躍しており、特にブラインドマラソンで優れた成績を残しています。出身は山口県下関市ですが、現在は福岡県太宰府市に在住し、結婚しています。
道下選手は小学校4年生の時に膠様滴状角膜ジストロフィーを発症し、中学生の時に角膜移植手術を受けましたが、右目を失明しました。短大卒業後は地元山口県で働きながら調理師免許を取得するなど充実した日々を送っていましたが、これからという時に左目も発症し、失明してしまいます。
26歳から盲学校に通い始め、ダイエットを兼ねてランニングを始めます。その後中距離ランナーとして地元の大会に出場するようになり好成績を残しますが、タイムの伸び悩みからフルマラソンへ転向します。
2013年には日本盲人マラソン協会の強化指定選手に選ばれ、2014年の防府読売マラソンでは2時間59分21秒というタイムでT12クラス（重度弱視）の世界新記録を樹立します。
2016年のリオデジャネイロパラリンピックの女子マラソンT12に出場し、3時間6分52秒で準優勝、銀メダルを獲得。2017年の防府読売マラソンでは、自身の持つ世界記録を2分9秒更新する2時間56分14秒で優勝します。
2020年には別府大分毎日マラソンで、自身の持つ世界記録を破る2時間54分22秒で2年連続・通算3度目の優勝を果たします。この功績からスポーツニッポンフォーラム制定「FOR ALL 2020」グランプリを受賞しました。
そして2021年の東京パラリンピックでは、女子マラソンT12に出場し、3時間0分50秒のパラリンピック記録で初優勝、念願の金メダルを獲得します。同年、紫綬褒章を受章しました。東京パラリンピックでの金メダル獲得の功績をたたえ、2021年11月6日、山口県下関市の下関中之町郵便局前に記念のゴールドポスト（第7号）が設置されました。
2022年には、2月の別府大分毎日マラソンの女子の部で2時間57分20秒のタイムで初優勝を果たします。併せて視覚障がい者部門では、中止となった前年を挟み、3大会連続・通算4度目の優勝を飾り、2冠を達成しました。しかし10月に開かれた東京レガシーハーフマラソンでは、1時間23分34秒でフィニッシュしたものの、伴走者が道下選手より先にゴールしたために失格となってしまいました。
2024年のパリパラリンピック女子マラソンでは、当初4位でゴールしたものの、3位でゴールしたスペインのエレナ・コンゴスト選手が競技規則違反により失格。その結果、繰り上がりで3大会連続となる銅メダルを獲得しました。
道下選手は、多くのサポーターからなる「チーム道下」に支えられています。彼女は「障害のある人のために発信力を上げたい」という思いを持ち、周囲の人々に支えられながら、競技生活を送っています。
まとめ：スペイン選手(エレナ・コンゴスト)失格理由はなぜ？パリパラリンピック女子マラソン
2024年パリパラリンピックの女子マラソン（視覚障害T12）で、道下美里選手が銅メダルを獲得した際、3位でフィニッシュしたスペインのエレナ・コンゴスト選手がゴール直前の出来事により失格となり、道下選手が繰り上がってのメダル獲得となりました。
■失格の理由
コンゴスト選手が失格となった理由は、伴走者との間のガイドロープを一時的に離したことでした。
パラリンピックの競技規則では、視覚障害のある選手は、伴走者との間でガイドロープを繋ぎ、常に一定の距離を保つことが義務付けられています。これは、選手の安全確保と公平な競争を保障するための重要なルールです。
コンゴスト選手の場合、ゴール直前で伴走者がふらついた際に、その様子を見て思わず伴走者の手を握ってしまったことが失格の要因となりました。これは、競技規則に違反する行為と判断されたのです。
■競技規則と選手の心情
パラリンピックの競技規則では、ガイドロープの使用が義務付けられている一方、選手と伴走者の間でどのような接触が許容されるのか、明確な規定が定められていない部分もあるようです。
コンゴスト選手は、伴走者が困難な状況に陥った際に、人間として自然な反応で手を差し伸べようとした結果、失格となってしまいました。このことは、競技規則の厳格さと、人間の感情との間の葛藤を浮き彫りにしています。
■今回の事件が与えた影響
今回の事件は、パラリンピック競技におけるルールと人情の間で生じる複雑な問題を浮き彫りにしました。
- 競技規則の厳格さ: パラリンピックの競技は、健常者のスポーツと同様に厳格なルールで運営されています。しかし、視覚障害のある選手にとっては、競技規則が必ずしも人間的な行動と一致しない場合もあることが明らかになりました。
- 選手の心情: コンゴスト選手は、メダル獲得の喜びと同時に、失格という厳しい現実を受け入れなければなりませんでした。彼女の心情は、多くの人の共感を呼びました。
- 競技の公平性: 競技規則は、全ての選手に公平な機会を与えるために存在します。しかし、今回の事件は、競技規則が必ずしも全ての状況に対応できるわけではないことを示唆しています。
■今後の課題
今回の事件を教訓に、パラリンピックの競技規則の見直しや、選手へのより丁寧な説明が必要であることが示唆されます。
- 競技規則の明確化: 競技規則をより具体的にし、選手や関係者が明確に理解できるようにすることが重要です。
- 柔軟な対応: 競技中に予期せぬ事態が発生した場合、競技規則に厳格に則るだけでなく、人道的側面も考慮した柔軟な対応が求められます。
- 選手へのサポート体制の強化: 選手が安心して競技に臨めるよう、心理的なサポート体制を強化する必要があります。
パリパラリンピック女子マラソンにおける道下美里選手の銅メダル獲得は、ドラマティックな展開とともに、競技の厳しさや人間の心の複雑さを浮き彫りにしました。この事件は、パラリンピック競技のあり方について、改めて考えるきっかけを与えてくれました。
