硫酸を希釈方法で水に加えてはいけない理由は?
水に濃硫酸を加えるとなぜ発熱するのかは、どのような性質からなんでしょうか?
硫酸の希釈方法で水の発熱理由はなぜ?
濃硫酸と水を混合したとき、硫酸の水和によりかなりの熱が発生します。
硫酸は強酸なので大部分が水中で電離します。
このとき当然、硫酸イオンには水が水和するのですが、硫酸イオンは水素イオンとくっついているより水と水和していた方が遥かに安定するので、その安定した分のエネルギーが熱になるため発熱します。
硫酸の希釈熱が大きい理由は
水分子との強い親和力により吸湿性と強い脱水作用があるためです。濃硫酸の脱水作用と発熱およびプロトン化能力が強いからです。
硫酸の水和熱は極めて大きく、第一水和エンタルピー変化は27.8Kj・mol-1
H2SO4(l)+H2O⇒H2SO4・H2O(l) ΔH=-27.8Kj・mol-1
また硫酸の溶解エンタルピー変化は73.4Kj・mol-1
H2SO4(l)⇒H+(aq)+HSO4- ΔH=-73.4Kj・mol-1
このため濃硫酸を希釈する場合は、発熱に注意しながら、撹拌して水に少しずつ濃硫酸を加え希釈する必要があります。しかし、水に溶かすと発熱するが、氷と混ぜると多くの水溶性化合物に見られるように、逆に寒剤の性質も示します。
水に硫酸を入れる(質問者の方法)と、硫酸に水を入れる方法とを比べた場合、全体で発生する熱量に差は生じません。
この操作で問題になるのは、水と濃硫酸の比重、及び沸点です。
水は、濃硫酸よりも比重が小さく、かつ沸点も低いです。
このため、濃硫酸の中に少量の水が入った場合、その界面で激しく発熱しますが、
水は比重が小さいため、液面近くにとどまりやすく、かつ沸点が低いので、簡単に突沸し、
熱い硫酸水溶液が回りに飛び散ります。
逆に、水に少量の硫酸が入った場合、同様にその界面で激しく発熱しますが、
濃硫酸は水に沈むので、周囲に比熱の大きな低温の水が多量に存在し、かつ硫酸自体の沸点は高いので、突沸しにくくなります。(あくまでしにくく、なので注意)
濃硫酸を水で希釈するという行為は、液量にもよりますが、水に硫酸を入れる方法で行っても
かなり発熱します。(ビーカーを触れないような温度になることもありますので、適宜回りを水で冷やすなりすることも必要な場合があります)
ちなみに、理科の実験などで「~してはいけない」と書いてあったら、大体2つの可能性があります。
1に、そんなことをすると危ない、2に、そうやると、操作の目的が達成しにくい
1の代表が、試験管やフラスコをアルコールランプやバーナーの火で、直接温めてはいけない、 加熱むらで割れることがあるからで、防ぐため、石綿付金網使ったりします。
2の代表が、アンモニアを水上置換で集めない、アンモニアは水にとても溶けやすいので、十分にアンモニアが得られないからです。