「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」の意味は?
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」とは由来は高杉晋作なんでしょうか?
三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい|意味は?
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」とは、古代の日本で歌われた都々逸(どどいつ)という歌の一つ。
都々逸は、江戸時代に流行した歌の一種で、七・七・七・五という短い詩の形式で詠まれました。俳句や短歌のような詩の仲間で、庶民に愛された歌で、江戸の寄席や遊郭などで歌われました。
この特別な都々逸、「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」は、江戸時代の花街で遊女とその常連客の間で歌われた歌です。
三千世界の烏を殺し
この部分は、古代インドの世界観に基づくもので、「三千界」は全宇宙を表し、略して「三千界・三界」とも呼ばれます。
三千世界とは一世界を千倍して小千世界。それを千倍して中千世界。それをまた千倍したのが三千大千世界で略して三千世界。宇宙ほどの広い世界のことです。
しかし、この歌では、男女の関係において、男性に対する呼びかけとして使用されました。
女性(遊女)が男性(客)に対して、主を取り巻く世間の些事から開放され、ゆっくりと過ごしたいという儚い願いを表現しています。
主と朝寝がしてみたい
ここで「主」とは、この場合、遊女のお客様を指しています。遊女は、お客様に誓約書を書いて渡すことがありました。その誓約書には、「あなただけが私を愛していると誓います。この約束を破れば神様の罰を受け入れます。」と書かれていました。遊女は、いくつかのお客様に同じような誓約書を書いて渡し、その約束を破ると、神様の罰としてカラスが死ぬと信じられていました。
したがって、この歌は、遊女が客に対して語りかける情景を描いています。遊女は客を引き留め、朝まで一緒に過ごしてみたいという願いを歌っていたのです。
三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい|由来は高杉晋作?
「三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい」の由来は高杉晋作が作った歌というわけではなく、高杉が通い詰めていた遊郭で、後に愛妾となる「うの」という遊女に向けて、三味線片手によく歌っていたことが由来のようです。
カラスは、遊女が客と取り交わす「浮気しません」っていう念書を、熊野の神様に届ける役目をしています。そうして交わされた約束が一つ裏切られるたびに、三羽のカラスが死んでいくといわれています。つまり、三千もの仏様がいるこの世の、あらゆる場所に生息するカラスを、すべて殺してでも、人気遊女のお前を独占して、2人でゆっくり朝寝がしてみたい、というような意味です。
三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい|遊女の解釈
遊女が起請文といって貴方と一緒になりますという約束を書くのは、牛玉宝印(ごおうほういんというお守りの紙の裏に書きます。そしてこの牛玉宝印は熊野神社のものが多く使われていて、これにはカラスが描かれています。カラスは熊野神社のお使いでもありますので、この起請文に書いたことを破ると、熊野のカラスが何匹づつか死んで、自分が死んで地獄に行った時にそのカラスに約束を破った罰で、責められるという言い伝えがあったそうです。
まとめ:三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい|意味は?由来は高杉晋作?
「三千世界の烏を殺し 主と朝寝がしてみたい」と続く都々逸は江戸時代のお女郎買いには厳しいルールがあって、やっとお目当ての花魁と同衾できた暁には敵方(あいかた=花魁)は客にぞっこんである、ということになっています。
大好きな貴方と朝が来たら離れなければいけない、かりそめの恋。
朝になってもずっといて欲しい…というのをカラス(「明け烏」という言葉があるように、カラスは夜明けの象徴です)をいなくして、朝が来なくなってほしい(「主(ぬし)」とは「御主人様」の花魁言葉)と甘えて言うセリフです。
で、そのココロですが、花魁としっぽりするまでに客はものすごい額のカネと時間をつぎ込んでいます。(=それだけ財力があると認められて初めて花魁が帯を解くのです。)
お客にはよりたくさんのお金を落としてもらいたい。
基本、時間料金なので「いつまでもいて欲しい」ということ。