鹿の王は2015年の本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞した人気作品。
2021年7月時点でシリーズ累計発行部数は230万部を突破していますが、鹿の王の評価は「難しい」「つまらない」という声も少なくありません。
鹿の王の簡潔あらすじ
鹿の王の主な登場人物は、
ヴァン(ヴぁん)
物語の主人公。戦士団独角の頭として大帝国東乎瑠と戦うが敗れて囚われの身となる。
ホッサル(ほっさる)
物語のもう1人の主人公。天才的な医術師。
ユナ(ゆな)
ヴァンに拾われて育てられる、元気の良い幼子。
マコウカン(まこうかん)
ホッサルの従者。ホッサルに命を救われた過去がある。
サエ(さえ)
後追い狩人の中でも素晴らしい腕を持つ、狩人の頭であるマルジの娘。
鹿の王は夢鹿国の王、ビスケットオリバと、アーク族の勇者、デスオーディンとの戦いの話です。
ビスケットオリバは、鹿一族を率いて、全土制圧していきますが、そこに立ちはだかるのが、デスーオーディンの愛弟子、王獣使いのスラッシュブリンガーです。
大帝国・東乎瑠(つおる)帝国から故郷を守るため、死兵の役目を引き受けた戦士団“独角”。妻と子を病で失い絶望の底にあったヴァンはその頭として戦うが、奴隷に落とされ岩塩鉱に囚われていた。
ある夜、不気味な犬の群れが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生。生き延びたヴァンは、同じく病から逃れた幼子にユナと名前を付けて育てるが、たったふたりだけ生き残った父と子が、未曾有の危機に立ち向かう。
病に罹る者と罹らない者の違いを見極め黒狼熱の治療法をもとめるために、大帝国東乎瑠で天才医術者と呼ばれたホッサルは黒狼熱が蔓延した岩塩鉱を生き残った男・ヴァンの行方を追っていた。
ホッサルと出会うはずのない2人が出会って、山犬がもたらす恐ろしい病気の謎を解明していきます。
ホッサルは遺体の状況から、二百五十年前に自らの故国を滅ぼした伝説の疫病“黒狼熱”であることに気づていました。
国を捨て生き残ったオタワル人たちは険しい山に囲まれた盆地に「オタワル聖領」を築いていました。
オタワル人は国が無くなった今でも医術をはじめとする様々な技術力が東乎瑠帝国、アカファで重宝されています。
先住民であるアカファ(旧アカファ王国)は東乎瑠(つおる)帝国の支配を受けている状況でしたが、征服民には致命的な黒狼熱は、アカファの民は罹りません。
この各国の政治的関わりや各国の住人たちの生活環境なども物語に大きく関与していきます。
ホッサルはその後、黒狼熱の秘密に気づきます。
ヴァンは何者かに攫われたユナを追って“火馬の民”の集落へ辿り着くと、彼らは帝国・東乎瑠の侵攻によって故郷を追われ、族長のオーファンも黒狼熱を患っていることも知ります。
仲間を失った“火馬の民”のオーファンは、故郷をとり戻すべく最後の勝負に出ようとしますが、病む者の哀しみを見過ごせなかったヴァンが、愛する者たちが生きる世界のために下した決断とは??
鹿の王は難しい?
鹿の王はあらすじを簡潔にまとめるだけでも難しいものがあります。
・登場人物が多い上に名前が覚えにくい
・国と国との政治的な力関係
・医療系知識に関する描写が多い
鹿の王は、登場人物が多彩であるし、聞きなれない漢字やカタカナの名や地名や国、民族、その思惑やらが入り乱れます。
読む人によっては非常に難しいのかもしれませんが、最初は難しい政治のところは斜め読みにして、ヴァン=ユナ、ホッサル=ミラルのところを重点的に読んで見るのも一つの読み方です。
1度で全てストーリーを理解しようとせず、何回か読み直してみて後からようやく理解できたこともあります。
また、ファンタジーというよりは病気についての謎解きがメインの話で全体的に淡々とした展開なので、『獣の奏者』ほどは盛り上がり・疾走感に欠ける点も「難しい」と感じる要因の一つかもしれません。
ちなみに、『獣の奏者』が好きなら、『鹿の王』よりも「守り人」シリーズの方が圧倒的に読みやすいですし、上橋作品”らしさ”も感じられて楽しめると思います。
鹿の王つまらない?
鹿の王の口コミを見てみると「つまらない」という感想も少なくありません。
獣の奏者や守人シリーズの好きな本ほどのめりこめず、難しさもあり、途中で飽きてしまった人もいるようエス。
鹿の王は確かに全体的に暗くて淡々とした流れとなっていて、突き動かされる感動とか、のめり込んでやめられない感じはあまりありません。
ファンタジーより人間性とか病気に関する謎解きばっかりなので『獣の奏者』のような躍動感のある描写・雰囲気を期待していたら、残念ながら「鹿の王」は予想を裏切ることになり、その結果、つまらないという印象を持つことになるのかもしれません。