垂直と鉛直の違いは?
高校物理では垂直ではなく鉛直という表現をよく見かけますが、垂直と鉛直の意味の違いは?
垂直・鉛直の意味の違いは?鉛直方向・上向きとは?
垂直と鉛直は区別されずに使われることも多いと思いますが、一応は違うものです。
垂直(すいちょく)と鉛直(じゅうちょく)は、いずれも物体の位置や方向を表す言葉ですが、微妙な違いがあります。
「垂直」は、水平面に対して直角(90度)の角度を形成することを意味します。垂直は、上下の方向を指し示すために使用されます。例えば、建物の壁や直立したポールは垂直であり、地面に対して垂直に立っていることが特徴です。
一方、「鉛直」は、重力の方向に関連しています。
鉛直(vertical)は、重りを糸で吊り下げたときの糸が示す方向。つまり、重力の方向。水平面に対して垂直の方向。
鉛直は、地球の重力ベクトルに従って垂直な方向を指します。地球上では、鉛直方向は通常、直立した状態で地面に向かって下方に引っ張られる力の方向を示します。鉛直は、物体が自然に取る垂直な方向を指します。
つまり、垂直は水平面に対して直角であり、鉛直は重力に対して直立した方向を指します。一般的に、垂直は建築や幾何学的な概念で使用され、鉛直は物理学や地理学などで使用されることがよくあります。
例題:高校物理の鉛直問題
地球上で自由落下する物体について考えます。物体は地面に対して鉛直に落下します。ある高さh(m)から落下した場合、物体が地面に到達するまでの時間を求めてください。ただし、空気抵抗は無視します。
解法:
物体が地面に到達するまでの時間を求めるために、鉛直方向の運動を考えます。
物体の鉛直方向の運動は自由落下であり、加速度は重力加速度(約9.8 m/s^2)です。鉛直方向の初速度は落下の瞬間には0と考えます。
物体の鉛直方向の運動における運動方程式は以下のようになります。
h = (1/2)gt^2
ここで、
h: 落下する高さ(物体が落下する距離)
g: 重力加速度(約9.8 m/s^2)
t: 時間(求める値)
運動方程式を解いて、時間tを求めます。
t = √(2h/g)
この式を使って、物体が地面に落ちるまでの時間を求めることができます。
注意点:
上記の時間は、物体が高さhから地面に到達するまでの総時間です。物体が上方向から落下する場合は、落下時間として求めた値を2倍する必要があります。
上記の式は、空気抵抗を無視している場合に適用されます。実際の状況では、空気抵抗の影響がある場合は異なる結果になる可能性があります。
■h = (1/2)gt^2の導出
地球上である高さにある物体を力を加えたりせずに静かに落とした時
物体には地球からの引力が働いていて、物体は落ちながらだんだん速くなります
この時の速くなる割合を加速度といい、g[m/s^2]で表されます
鉛直下方向を正とすれば、質量mの物体に働く重力はmgとなるので、運動方程式は、
ma=mg → a=g
となり、a=dv/dtなので、
dv=g dt
となるので、積分すると、
v=gt+C
自由落下なのでt=0でv=0よりC=0となるので、
v=gt
となります。
また、v=dy/dtなので、
dh=gt dt
となるので、積分すると、
h=(1/2)gt^2+C
t=0でh=0よりC=0となるので、
h=(1/2)gt^2
となります。
まとめ:垂直・鉛直の意味の違いは?鉛直方向・上向きとは?
垂直と鉛直はどちらも、ある平面に対して直角の方向を指しています。しかし、垂直は相対的な概念であり、鉛直は絶対的な概念です。
垂直は、ある基準となる面や線に対して直角の方向を指します。例えば、地面に対して垂直な方向は、上から下に向かう方向です。また、壁に対して垂直な方向は、左右に交差する方向です。
鉛直は、地球の重力の方向を指します。地球の重力の方向は、常に下に向かっています。そのため、鉛直は、地球上ではどこでも同じ方向を向いています。
つまり、垂直は基準となる面や線によって方向が異なりますが、鉛直は地球の重力の方向なので、どこでも同じ方向を向いています。