首里城火災で心を痛めている人がツイッターに数多くその思いを吐露しています。
正殿を中心に北殿、南殿も全焼したとみられ延焼がなおも続いているようですが、
首里城火災で世界遺産登録はどうなるのでしょうか?
首里城が世界遺産登録された理由は?
世界遺産登録に登録されるには下記の条件を満たしたうえで、ユネスコにて認定されます
- 人類の創造的才能を表現する傑作。
- ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
- 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
- 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
- ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例
- 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの
- ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
- 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
首里城は琉球王国の政治、外交、文化の中心地として威容を誇った象徴であり、
中国と日本の築城文化を融合した独特の建築様式や石組み技術には高い文化的・歴史的な価値が評価され
2000年(平成12年)12月に世界遺産登録されました。
首里城火災以前に世界遺産登録の抹消例
世界遺産登録されたのは良いけれど、その後、登録抹消されてしまった例があるのかというと調べてみると、
- アラビアオリックスの保護区(オマーン)
- ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)
の2か所で世界遺産登録が取り消しになっていることがわかりました。
アラビアオリックスの保護区はオマーンに生息している「アラビアオリックス」というウシ科動物の保護区。
ユニコーンのモデルとも言われている生物です。
まっすぐ伸びた美しい2本の角を目当てにした乱獲されたことにより1972年に一度は野生絶滅に追い込まれたのの、
オマーン国王がアメリカ動植物保護協会からアラビアオリックスを譲り受けた、
保護区での繁殖をさせたことが評価され世界遺産に登録されました。
しかしオマーン政府は2007年1月に天然ガス・石油などの資源開発の目的で、
アラビアオリックス自然保護区の範囲を世界遺産登録時の27,500km2から
2,824 km2へと大幅に縮減したため、世界遺産登録時とは状態が大きく異なるとみなされ世界遺産登録が抹消されました。
ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)はエルベ川の上流域に当たるドイツ東部に形成された渓谷の一つ。
なだらかな谷には川を挟むかたちで都市ドレスデンが発達し、
エルベ川沿いの中央ヨーロッパにおける優れた文化的景観を形成していることや、
渓谷と都市が一体化した景観が評価され2004年に世界遺産登録となりました。
しかし2005年、第二次世界大戦以前から計画されていた大規模な架橋建設の住民投票が実施され、
橋を建設することになり、実際に橋の建設が始まったことから、世界遺産登録が抹消されました。
ノートルダム寺院火災では世界遺産登録は取消(抹消)されていない!
世界遺産登録が抹消された2つの事例に共通しているのは、
世界遺産登録時の状況と著しく異なる状況になってしまったこと。
その点を考えると首里城火災で世界遺産登録が取り消しになる可能性は考えられるものの、
2019年4月15日には首里城よりも早い時期に世界遺産登録されたノートルダム寺院も火災に見舞われました。
夜を徹して消火活動が行われたものの屋根の3分の2が焼失するなど大規模災害に発展してしまいましたが、
ノートルダム寺院の世界遺産登録は火災によって取消(抹消)されることはありませんでした。
その理由はというと、ノートルダム寺院だけが世界遺産に登録されたわけではなくあくまでも、
「パリのセーヌ河岸」として周辺の文化遺産とともに登録されたからです。
首里城火災で世界遺産登録は取消(抹消)はほぼ考えられない
首里城に関しても世界遺産にはどのように登録されているのかというと、
「琉球王国のグスク及び関連遺産群」です。
沖縄本島南部を中心に点在するグスクなどの琉球王国の史跡群が世界遺産登録となっていて、
さらに戦後になって復元された首里城に建物や城壁ではなくあくまでも「首里城跡(しゅりじょうあと)」が
世界遺産登録の対象となっているので、首里城火災で世界遺産登録の取消はまず考えられないと言ってよいでしょう。
ちなみに、首里城周辺で世界遺産登録となっているのは
- 今帰仁城跡(なきじんじょうあと)
- 座喜味城跡(ざきみじょうあと)
- 勝連城跡(かつれんじょうあと)
- 中城城跡(なかぐすくじょうあと)
- 首里城跡(しゅりじょうあと)
- 園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)
- 玉陵(たまうどぅん)
- 識名園(しきなえん)
- 斎場御嶽(せーふぁうたき)
といった史跡群になります。