「翔んで埼玉」は、マンガ「パタリロ」で知られる魔夜峰央さんが所沢住民だったころ描いた作品。
「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」などインパクト抜群のセリフで作品発表から30年以上も経て映画化されると、日本アカデミー賞で最多12部門で優秀賞を受賞する異例の大ヒットとなりました。
ただ映画化の話が来た当初は、驚いたというより「本気か?これを実写映画化だと?!」と感じたそうです。
■「飛んで埼玉」あらすじ
東京でトップの名門高校・白鵬堂学院の生徒会長は、東京都知事の息子の壇ノ浦百美。
米国帰りの転校生で東京丸の内の大手証券会社の御曹司・麻実麗に引かれるが、麗の正体はあろうことか埼玉出身で大地主西園寺家の息子。
埼玉は医者を呼べとなった時に、医者はいなくて祈祷師はいるという世界。
埼玉と東京の「通行手形」の撤廃を求める「埼玉解放戦線」のメンバーだった……というストーリー
翔んで埼玉の原作の背景には作者の逃亡願望?
作者の魔夜峰央さんが「翔んで埼玉」をまとめていたのは1980年ごろで埼玉県の所沢に住んでいました。
もともと新潟県出身・在住だった魔夜峰央さんは人気漫画となった「パタリロ!」の連載で忙しくなったことから上京することになり、所沢に落ち着くことになりました。
なぜ所沢なのかというと、「パタリロ」を連載していた当時の『花とゆめ』(白泉社)の編集長が、東京ではなく所沢に住むことを薦めたから。
土地勘もなく当時の西武沿線には「ときわ荘」を筆頭に漫画家もたくさん住んでいたので、所沢の所沢市保健センターが近くにある牛沼というところに住むことに決めたそうですが、なんとその編集長が所沢住民だったそうです。
その頃の所沢は、青い空と畑しかない住みやすい所だったそうですが、常に編集長に見張られているような、 強迫観念にとらわれるようになります。
かといって、気分転換になりそうな娯楽が周囲にはなく仕事するしかないことも、毎日追い込まれているような心境に傾いていき「一刻も早く脱出したい」という思いを募らせます。
作者の魔夜峰央さん結局、4年間所沢に住みましたが、その後、横浜に引っ越しをしたため、脱出願望が消えうせ作品は未完のままで終わっています。
新潟出身の魔夜峰央さんが一時的に所沢住民、埼玉県民だからこそ、「やっぱり埼玉の人は本当は東京・赤坂みたいな都会にに住みたいんじゃないか?」
というような、空気感みたいなことを感じ、それを自虐ネタで描きあげたのが「翔んで埼玉」だったというわけですね。
翔んで埼玉の原作には遠距離恋愛も反映
ちなみに、「翔んで埼玉」に登場する埼玉解放戦線という組織には、大宮支部、浦和支部、川越支部などがありますが、所沢支部はありません。
魔夜峰央さんが住んでいた町ですから、支部があっても良さそうですが、やはり思い出の土地を作品に出すのは何かしらの抵抗があったのかもしれません。
魔夜峰央さんの奥さんは、現役のバレエダンサーでダンス教室も運営している山田芳実さんという方ですが、遠距離恋愛の末に結婚をしています。
交際中は山田芳実さんが魔夜峰央さんのいる所沢に遊びに来ては、駅前にある繁華街にまで足を延ばして逢瀬を繰り返していたそうです。
山田芳実さんは茨城県出身ですが、2人の出会いは亀戸の公民館。
当時まだ高校3年生だった山田芳実さんが別の漫画家さんのファンクラブの会長をしていて、そのファンクラブの交流会で魔夜峰央さんも顔を出したことが2人の出会いとなりました。
山田芳実さんは高校卒業後は、茨城を出て京都のバレエ学校に通うようになり、結婚までずっと遠距離恋愛を続けていたそうです。
翔んで埼玉の原作・作者も作品に出演!
翔んで埼玉の作者・魔夜峰央さんも実は作品に出演しています。
監督に「ちょっとでいいから映りたい。通行人でもいいから」と依頼をしたところ、結果的に冒頭のダンスシーンで家族全員で出演することになります。
10人の男性ダンサーの中心で踊っていたのが魔夜峰央さんの息子で東京バレエ団に所属するダンサー・山田眞央さん。
さらに娘で漫画家の山田マリエさんも出演指定m佐生。
翔んで埼玉の作者の代表作はパタリロ
魔夜峰央さんの代表作といえば、間違いなく「パタリロ」です。
すでに単行本は100巻を突破している人気漫画で、舞台はバミューダ=トライアングルの真ん中に存在する架空の島国で、ダイヤがとれることから世界的に裕福なマリネラ王国。
パタリロとはその国王で、早くに父親を亡くしたことから10歳から国のトップに立っています。
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007シリーズめいたスパイアクションがあれば推理小説並みのミステリーもあり、宇宙人が出てくるSFもあれば黒魔術が絡むオカルトもあります。
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