梅干しの土用干し(干し方)で夜露に濡れさせるのはどんな意味・効果があるんでしょうか?
土用干し(干し方)は三日三晩干し続けることになりますが、梅干しが夜つゆでかびたり虫がついたりする心配はない?
梅干しの夜露の意味・効果は?土用干し(干し方)
梅干しを三日三晩かけて土用干し(干し方)する目的は、
皮を軟らかくする
余分な水分を飛ばす
美味しそうな色にする
といったもの。
夜露でわずかに湿らせたうえで、翌日の日中に日光に当てることで「浸透圧の差」が生じ梅干し内部の水分がしみだしていき乾燥を促すことができます。
また露の働きで皮を柔らかくさせる効果もあります。
梅干しと同じよう要領で、主に冬季に作られる高野豆腐は夜間に凍結させることで内部の水分を吸いだして乾燥を促しています。
食品の貯蔵に塩漬け、砂糖漬けや薫製、日干しを利用するのは食品の水分の減少により腐敗微生物の生育を抑えるためです。塩漬けや砂糖漬けでは食品の中の溶質(塩分、糖分など)濃度より食品の外の溶質濃度が高いため浸透圧が生じ、食品の中の水分が外に移動して食品内の水分が減少します。
https://kinki.chemistry.or.jp/pre/a-195.html
半透膜(溶媒は通すが溶質は通さない膜)で隔てた二つの溶液の濃度に差があると、濃度を等しくしようと濃度の低い方から高い方へ溶媒を移動させる圧力差が生じます。この圧力差を浸透圧と呼び、濃度差が大きいほど大きな浸透圧が発生するため、塩や砂糖の濃度が高いほど多くの水が食品の外に出ます。純溶媒と濃度c (mol/l)の溶液の間に生じる浸透圧(p (bar))はp=cRTで表されます。但し、Rは気体定数、Tは絶対温度です。
日干しでは乾燥により食品の水分が減少します。薫製では薫煙中の種々の成分が微生物を死滅させたり、生育を抑えたりすると考えられますが、薫煙に先立つ塩漬けによる水分の減少も相乗的に作用していると考えられます。
梅干しの土用干し(干し方)の夜つゆでカビ・虫は?
梅干しの土用干し(干し方)で夜つゆに当てることでカビが生えたり虫がつく可能性はゼロではありません。
特に塩分濃度が低い場合は要注意で、10%以下の場合には、夜つゆに当てるのは避けたほうが良いかもしれません。
もし、雨や水で水滴が見えるほど濡れているなら、アルコール(ホワイトリカーなど)に浸して再度干して下さい。
土用干しの日程で「夜露にあてる」とあるのは、実際に露で濡らす訳ではなく、一晩夜気に曝して梅干しの中の水分が均一になるのを期待して行います。
「土用干し」と言うのは、あくまでも時期の目安で、その期間に必ずしなければ問題があると言う物ではありません。
これくらいの時期が、丁度梅が漬かって干すのに適しているのを、昔の人が経験で知っていたのでそう呼ぶのです。
(今では「土用」と言うと「鰻」か「梅干し」くらいしか連想されないですが、農作業や漁業をする方にはいまでも夏の土用を基準に作業しておられる方もおられます。)
気温が高く日差しが強い、雨が降らない数日間を選んで行えば大丈夫です
万が一、梅干しにカビが生えた場合の処法としては、まず、白梅酢と梅を切り離します。
梅は、ホワイトリカー35度に浸けて消毒。半日。
①白梅酢に浮いたカビは丁寧に取る。鍋に移し沸かす。煮沸で5分。冷ませてから梅と合わす。
②白梅酢を廃棄して壱から浸け直す。・・・浸けはじめが早い段階なら有効な方法。
白梅酢カビを取った後の液、そのままの再使用は危険でしょう。