ウォシュレットといえば今では温水洗浄便座の世帯普及率は7割を越え、その名前が温水洗浄便座の代名詞的存在ともなっています。
2017年時点では累計4000万台を超える出荷数となっていますが、「ウォシュレット」には知られざる開発秘話がありました。
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ウォシュレット開発秘話がアンビリバボー!誕生秘話がヤバい!
ウォシュレットを開発・販売しているTOTO(旧・東洋陶器)は元々アメリカン・ビデ社製の「ウォッシュエアシート」と呼ばれる医療用洗浄便座の輸入販売を1964年から行なっていました。
アメリカン・ビデ社が痔の患者用につくった医療用便座で、オイルショックなどのあおりを受けて低迷していた売上を改善する商品として社内では期待されていました。
ところが、ウォッシュエアシートを実際に販売してみると、日本市場に合致せず、評判がよくありませんでした。
温水の温度が不安定で熱すぎたり冷たすぎたりすることもあれば、発射される温水の方向もまちまち。
昭和の巨匠・遠藤周作にも『ものすごく熱いお湯 ~中略~ 一度しか使わないこんなもの』とウォシュレットを批判されてしまったほど。
あまりにも使い勝手が悪かったことから、TOTOは1978年に自社開発を決意。
開発にあたってぶつかった問題は、
ノズルの位置
ノズルの角度
水の温度
の3つ。
温水を当てる位置、すなわち、便座に座った時の「肛門の位置はどこか?」を探るために、当時の開発担当者は、針金を張った便座に座って肛門の位置を針金に印をつていきました。
ただサンプル数が少ないと日本人の平均的な肛門の位置を割り出すことはできません。
より多くのサンプルを集めるために開発担当者は、嫌がる女性社員だけでなく家族にも依頼して男女合わせて300人分以上のデータを集め、最適なノズルの位置をついに突き止めました。
次に課題となったのはノズルから温水を噴射する角度でした。
ノズルの場所を肛門のすぐ下にしてしまうと、お尻を洗った温水でノズルを汚すことになります。
肛門から離れた位置から角度をつけて温水を噴射しなければいけないものの、噴射角は何度が最適なのか、研究者たちは角度を少しずつ変えて実験を繰り返します。
その結果、肛門から跳ね返ってきた温水が周囲に掛からないような角度43度(ビデは53度)であることがわかり、さらにノズル部分には抗菌・防汚にも配慮がなされました。
また温水を噴射するノズルをを出しっぱなしにしてると、便が付着する恐れがあります。
開発者たちが頭をいためていたある日のことです。開発担当者のひとりが、たまたま道ばたに停まった車からラジオのアンテナが伸びてくるのを見てひらめきます。
「お尻を洗うときだけ出てきて、使い終わったら収納されるノズルはできないか」と思いついたのです。
さまざな創意工夫と試行錯誤の末、先端に噴射口を取り付けられたノズルが温水を噴き出す力を利用して飛び出して的に近づいてから発射する機構を取り入れます。
またバネの力で自然に収納させるという方法も同時に開発されています。
そして最後はノズルから噴射される水の温度。
ウォシュレットGは、1980年に発売された初めての自社製温水洗浄便座で、日本人に合った製品にするために、温水の温度制御技術や専用熱交換器の開発、洗浄ノズルの格納方法の検討など多くの新技術が開発された。
まずは上限温度・加減温度を設定するため、我慢できる温度のぎりぎりのところまで、研究者たちは自分の体で実験を繰り返します。
高温での実験には「熱くて飛び上がるような感じ。もう、いやだ!」と思ったそうです。それでも、1日16時間交替で、技術者たちはお湯を浴び続けてデータを取りました。
設置場所の寒暖のちがいに対応できるように、零下10度の寒冷地やプラス30度の猛暑の条件の下で使うことを想定した実験も行われました。
両極端の状況での実験で、体調を崩す人も出ましたが苦労に苦労を重ねた実験の結果、お湯の温度は38度、便座の温度は36度、乾燥用の温風は50℃が最適であることがわかりました。
さらに温度を一定に保つ温度コントロールには電子回路(IC)を組み込む案が採用されますが、ICは水に弱く漏電すると故障の原因となります。
TOTOはいくつかICメーカーを尋ねたものの「水に弱い」ことを理由に共同開発や部品提供は断られ続けていましたが、ここでも研究者のひらめきがピンチを救います。
信号機は雨にさらされても壊れることはないし、信号機を制御しているのもICのはず。
信号機を製造しているメーカーに協力を依頼したところ、「ハイブリッドIC」というICを特殊な樹脂でコーティングする技術を持っていました。
ありがたいことに、メーカーの担当者は、「自分たちの技術が広がるのであれば」と協力を取り付けることができ、ついに1980(昭和55)年、温水洗浄便座「ウォシュレット」がついに販売開始となりました。
ウォシュレット開発秘話がアンビリバボー!宣伝もヤバい!
ウォシュレットの開発には成功したものの、残された問題はいかに販売するか?でした。
雑誌や新聞などに広告掲載を依頼するも『便器は、汚い尻をイメージさせる。雑誌の品位が落ちる』『トイレは、“ご不浄”』と広告掲載を拒否されます。
そこで、TOTOは、当時、ウォークマンやウィスキーの商品コピーの生みの親、天才コピーライターと言われていた仲畑貴志氏にウォシュレットの広告宣伝を依頼することにします。
仲畑貴志氏も当初は「商品価値がピンときません」と乗り気ではなかったものの、研究者からの「常識への戦いなんです」という熱意に押されて依頼をひきつけます。
そして生まれたのが、「お尻だって、洗ってほしい」のキャッチコピーに代表されるウォシュレットの一連のマーケティングでした。
テレビCMもゴールデンタイムと呼ばれる夜7時台に放映され「食事中に便器なんか見せるな!」というクレームが大量に寄せられたそうです。
当時の認識としては「紙で拭けば十分なのに、なんでわざわざお湯で洗わないといけないんだ」という声が大半でウォシュレットの価値を理解する人はあまりいませんでした。
トイレの歴史も和式から洋式への切り替えに長い期間を要したように、ウォシュレットの普及にも時間はかかったものの、その後は徐々に全国から注文が入るようになり結果的に数年で10万台を超える大ヒット商品となりました。
ちなみに、ウォシュレットが世界で断トツに普及しているのは日本ですが、日本の水の安全性の高さや日本の水が軟水で水垢で故障しにくいといった要因もあります。
世界的にはウォシュレットはまだまだ普及しているとは言えない賞品でマドンナが2005年に来日した時、「日本の暖かい便座が懐かしかった」ともコメントしています。
日本以外だと中国・香港・台湾・韓国・ベトナム・シンガポール・インド・アラブ首長国連邦などの中東地域・アメリカ・カナダでもウォシュレットは販売されているそうです。