「雪山」は2000年の映画『世にも奇妙な物語 映画の特別編』で上映されたオムニバス作品の一つ。
有名な2つの都市伝説を下敷きに、日常から離れた雪山での恐怖を描いた「雪山」の考察・解説。
雪山(世にも奇妙な物語)あらすじ
飛行機が雪山に墜落し、5人の男女が生き残る。うち1人の麻里(中村麻美)は生き埋めになり、友人の美佐(矢田亜希子)らが助けようとするも、誤ってスコップで首を刺して麻里を死なせてしまう。残った4名は山小屋に避難し、救助を待つのだが・・・。
ちなみに、「雪山」の劇中で語られる「戻ってくる死体」の話は、ドラマ版エピソード「歩く死体」として放映されたもの。
■「歩く死体」あらすじ
主人公・斎藤一景はカメラマン。今回、別れる直前であった恋人の篠田明子とともに雪山へ登山した。しかし、二人は遭難。斎藤のみが生きて帰ってくる。斎藤は叫ぶ。「死体が歩くんだ!」
斎藤と死んだ篠田は病院へ収容。収容後、助手の村田は斎藤の手記を読み始める。そこには驚くべきことが書かれていた。
(手記の内容)篠田は死んだ。死んだ篠田を何度も外へ埋めるのだが、いつのまにか死体がテントに入ってきている。限界に来た斎藤は死体が歩く瞬間を撮ろうと決意しオートで写真を撮る決意をする。
村田がここまで読んだ瞬間、看護師から、遭難時の写真を受け取る。そこに写されていたのは、死んだ篠田を自ら掘り出している斎藤の写真。そう、死体が歩いているのではなく、斎藤が無意識のうちに篠田の死体を運んでいたのだ。
真実に気づいた村田は慌てて斎藤の病室に行くが既に斎藤の姿は無く、斎藤は無意識のまま霊安室から篠田の死体を持ち出してどこかへ向かって歩くのであった。
雪山(世にも奇妙な物語)解説ネタバレ
ある日起こった飛行機事故。その飛行機は雪山に墜落し、生き残ったのは美佐(矢田亜希子)とその友人・麻里(中村麻美)、カメラマンの結城(鈴木一真)、医師の真辺(宝田明)、そして中年の男・山内(大杉漣)だった。
麻里が事故のせいで足を怪我し、どうにかして山小屋まで運ぼうとするが力つき、仕方なく彼女を埋めていってしまう。
そしてついに山小屋を見つけ、喜ぶ四人だったが,美佐が友達を助けなければと結城とともに行く。
しかし結城は誤ってスコップで麻里の首を突き殺してしまう。怖くなって二人は山小屋に駆け戻った。
その山小屋で救助隊を待つ四人は、それぞれ持っていた食料を皆で分け始める。山小屋の中にもいくつか食料があった。何と毛布まで揃っていた。
やがて四人は寒さで眠くなってくるが、全員が一度に眠り込んでしまったら凍え死んでしまう。一人見張り番を置き、残り三人は眠るというルールで全員仮眠を取る。そして見張り番だった人は次の人を起こしに行き、番を交代してその場所で眠るというルールだ。
山内→結城、結城→真辺、真辺→美佐・・と一人ずつ順番に起こす役が交代して行くが、それからしばらく経った後、不意に目覚まし時計が鳴り山内が目を覚ました。何故か全員が自分の寝場所でそれぞれ眠っている。「俺を起こしたのは一体誰なんだ?」
順番が来るたびに最初に見張り番をしていた者を起こした人間が誰だか分からない。それが何回か繰り返された後、美佐がある事に気づく。
山内→結城、結城→真辺、真辺→美佐、ここまではいい。だがこの後、美佐が山内を起こしに行こうとしても山内は結城を起こすため次の場所に居て、元の場所に居ないのだ。それなのに美佐は山内の場所で誰かを起こし、誰かと交代した事になる・・。
思わず悲鳴を上げる美佐。「私達以外の誰かが居る!」
※四隅に一人づつ寝て、5分後に隣りを起こし、起こした人はその場で眠り、起こされた人は隣りに行く。
これを朝まで続けるには、5人必要です。 4人目に起こされた美佐は、実際は無意識に一人目の宝田を起こしており、三角に移動していたのです。
美佐は、まさか麻里が復讐のために蘇り、自分達を殺しに来たんだと思いこむ。そして謎の人影が彼女の目の前をよぎった・・。
やがて暗闇の中で真辺が何者かに殺され、そして山内まで死んでしまう。
外に埋められた山内だが、朝になると死んだ男は山小屋の中に横たわっている。
何度外に埋めに行っても、翌朝には山小屋に戻ってきている。
残ったのは美佐と結城だけ。
「俺達の事をビデオに残すんだ!これが俺達が生きた証だ!」
そう言いながらビデオを自分達の前に設置し、二人は眠りに落ちていく。
ふと目が覚めた美佐。隣りで眠っていたはずの結城を見ると、彼の背中には斧が突き刺さっていた。半狂乱になりながらも、誰が結城を殺したのか確かめるため震えながらビデオを見る美佐。
そこに写っていたのは、白い服の女。麻里の服だった。
(やっぱり麻里が・・)
そして夢遊病になった結城が、夜になるたび死んだ男を掘り起こして山小屋に運んでいた。
カメラの中の女は結城にオノを振り下ろす。
そしてカメラは女の顔を映し出した。
それは麻里では無く・・美佐だった。
(どういう事?まさか・・私が殺したの?)
美佐は叫んだ。
救助隊の声で我に帰る美佐。自分がいたはずの山小屋はどこかへ消えていて、死体だけが自分の周りにゴロゴロと転がっている。放心状態の美佐に「君の名前は?」と尋ねる救助隊。
「私の…私の名前は…?」
麻里の服を着ている美佐。それとも・・
(私が麻里?)
美佐は眠っている間に外に出て、友人と服を着替えていました。
初めは美佐がダウンジャケット、友人が白いツーピース。
最後のシーンでは美佐が白いツーピース、死んだ友人がダウンジャケットになっています。
雪の中に埋もれて絶命している友人が着ていたのは、美佐のスキーウェアだった。
雪山(世にも奇妙な物語)考察
「雪山」で麻里(中村麻美)はあくまでも主人公の友人で、生き残った5人のうち最初に死んだ人です。
雪山での遭難という極限状態の中で、更に友人が自分も含めてみんなから見殺しにされたような状態で雪に埋められ、とどめにスコップで刺し殺された、というとんでもない状態で、主人公が罪悪感から無意識に一人二役をしていたのです。
あんな死に方をした友人が自分たちをきっと恨んでいるだろうと思いつめ、無意識にバッグに入っていた友人の服に着替え、友人になりきって復讐をしていたのです。
(自分の顔と友人の顔が頭の中で入れ替わった。 雪に埋もれていた人物も入れ替わって見えた。 そのため、朝になって気づくと、自分が友人の服を着ていて、死体が自分の服を着ていると感じた。)
前振りとして、メガネの医師(宝田明)がふたりの男の遭難譚を話すシーンがありますが、これがヒントになっています。
あくまでも無意識の行動なので、ビデオに映った自分自身を見てショックを受け、呆然とし、やった覚えのない行動を自分がしていることの衝撃から、名前を聞かれてもショックで自分自身が誰かもわからなくなったって感じだと思います。
そもそも、山小屋も彼らが見ていた幻で、もともと存在していなかったのでしょう。
(幻覚をみていた 焚火も暖かくなった気がしただけで、本当には存在していない)
ただ見た人によって感じ方が違うので、実は雪の中で死んだのは美佐で、生きているのは麻里なんだけど、雪山遭難と罪悪感による混乱で自分が美佐だと思っている。
そして、死んだのが麻里だと思い、死体の顔でも幻覚をみる。
一緒に遭難した人たちは、もともとお互いの名前と顔は知らないから、その矛盾に気づかない。
ビデオの映像を見ている時も、麻里の服を着た美佐の姿だったけど、脳の中で転換されているだけで、赤の他人が見れば、麻里の服を着た麻里なのかもしれない。