「善女のパン」はイギリスの小説家オー・ヘンリーによる短編でミス・マーシャがこの小説の主人公。
NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」でも引用されましたが、善女のパンあらすじ感想は?
善女のパンあらすじ感想は?オーヘンリーでカムカムエヴリバディ
パン屋を営んでいるマーサは40歳の独身女性です。ミスと呼ばれるは、婚期を逃してしまったからである。
マーサの店に毎日、パンを買いに来る礼儀正しい中年の男性客に興味を持ちます。
男性がいつも買うパンは2個で5セントの古くなって堅いパンでした。
自慢の焼きたてパンは1個で5セントです。
マーサはこの男性の服装や爪にあった赤と茶のシミ汚れから貧しい画家だと推測します。
客とは時おり挨拶ていどの話をするが、身の上のことなど失礼になるのではと気を使って聞かなかった。マーシャの想像が膨らんでいく。
きっと、彼は貧しい画家に違いない。絵が売れるまで、古くなったパンで我慢しながら、絵筆を握っているのだと。
マーシャは、自分が焼いたパンとスープで、彼と食事をしていることを何度も空想した。気の弱いマーシャはそのことを話せずにいた。
ある日、チャンスが訪れた。いつものパンを包もうとしたとき、通りを消防車がサイレンを鳴らして走り去った。客はそれを見に通りへ出た。
そのすきに、パンを二つに切ってバターをたっぷりと塗り、またパンを元通りの姿に戻して紙に包んだ。客は雑談をしてパンを持ち帰った。
マーサは想像します。
もちろん、男性との恋の始まりをです。
彼女をひとり想像をふくらまして、彼がパンを食べる時の驚きと、自分の好意をどんな風に感じるかと心を躍らせていた。
ところが、男性が店に怒鳴り込んで来ます。
「まぬけ」「おまえのせいでめちゃくちゃだ」「おせっかいの老いぼれ猫」
ひどい罵声を浴びせます。
男性は建築の製図を描く仕事をしていました。
賞の出るコンペ、設計競技に出品するために男性は製図を描いていたのです。
客と一緒にきた男が説明した。
「彼はね、この3ヶ月というもの、市役所の新しい設計に取り組んでいたんですよ。懸賞に応募するためにね。きのうやっと線にインクを入れるところまできたんです。鉛筆で書いた線を消すには古いパン屑が一番だったんですよ。ところが、あのバターですよ。おかげで下図はめちゃくちゃ、使い物にならなくなったんです。」
鉛筆で描いた後、インクをいれます。
そして、さらに鉛筆を消すために古いパン使って消していたのです。
製図がバターで汚れてしまったのは言うまでもありません。
その後、マーサは男性のために来ていたオシャレなブラウスを脱ぎ、とびきりの化粧品も捨てました。
善意でしたことが、こんな押し売りのような形で終わってしまうという皮肉な結末を向かえます。
Oヘンリーといえば、「賢者の贈り物」や「最後の一葉」などの心温まる話が有名ですが、こういう話もたくさん残した作家です。