松本清張の小説『ゼロの焦点』のタイトルの意味は?
ゼロの焦点とはどういう意味なんでしょうか?
ゼロの焦点の意味は?松本清張の小説
松本清張の小説『ゼロの焦点』のタイトルの意味は「光輝いているのにその明るさは無いに等しい」という意味ですから、虚栄とか虚飾といった言葉に言い換えられます。
名誉ある立場にありながら、それを打ち消すような恥ずかしい過去がある登場人物を、このタイトルで表現したかったのでしょう。
まとめ:ゼロの焦点の意味は?松本清張の小説
松本清張の作品には、「砂の器」「霧の旗」「波の塔」「空の城」などこのタイプの題名が多く、
どの作品も栄光や名声のいかがわしさをテーマにしています。
清張は意味のよくわからない抽象的なタイトルの作品が多いですが、清張自身はその理由として
「『波の塔』だとか、『水の炎』だとかいうような題を出しておけば、内容が推理小説であろうが、ロマン小説であろうがあるいは時代小説であろうが、あと一ヶ月のほんとうの締切りまで時間がかせげるわけであります」(講演『小説と取材』より)
と述べています。
つまり、雑誌社としては宣伝のために早めにタイトルが欲しいわけですが、清張としては作品の内容が固まっていないため、どんな内容にしてもそれなりに格好の付くタイトルを伝えておき、その後にギリギリになってから執筆を始めるということが多かったようです。
『ゼロの焦点』は最初は「太陽」という雑誌に『虚線』というタイトルで掲載されていましたが、「太陽」が休刊してしまったために中絶してしまい、直後に「宝石」誌に『零の焦点』のタイトルで連載されたものです。
「宝石」の編集長だった江戸川乱歩は当時のことを
「松本さんは本誌にはいいかげんなものは書きたくないという気持ちから、なかなか想が纏まらなかった。そこへ『太陽』の休刊で、まだはじまったばかりの長篇が中絶するということを聞いたので、これを本誌に引きつぐようお願いして、成功したのである」
と述べていますから、「宝石」に作品を連載するということだけ決まっていて、内容は土壇場まで何を書くのか決まっていなかったようですから、先に『零の焦点』というタイトルのみ考え、後から内容を考えるつもりだったと思われます。