松本清張の『ゼロの焦点』ストーリーのネタバレ
室田儀作はやってもないのにまぜ『私がやりました』と自首したのでしょうか?
結局あの三人の女性はどういう人たちだったのでしょうか?犯人は室田幸子?
ラストシーンで久子が自殺するとなぜ佐知子が発狂したのでしょうか?
佐知子はナイフで久子を殺し、宗太郎と本多を殺した罪を擦り付けようとしていたはずなのに、なぜ久子が自殺するとあれほどショックを受けてしまったのでしょうか?
ゼロの焦点ネタバレ・ストーリーあらすじ|犯人は室田幸子?
『ゼロの焦点』では
鵜原禎子=「鵜原という男と結婚したばかりの新妻」
室田佐知子=「金沢の名士・室田の妻」
田沼久子=「とある男と内縁関係にあった女性」
というのがネタバレでした。
が、佐知子と久子には、ウラというか「過去」がありました。
原作が世に出た当時の世相を反映していると言えばよいでしょうか、
佐知子と久子は、
進駐軍(太平洋戦争終戦後、日本に駐留したアメリカ軍)の兵士を相手にする
売春婦(通称・パンパン)
だったのです。
が、佐知子は、戦争のせいでそのような商売をしていたものの、
もとは学のある女性だったため、
ふとしたことから、金沢で「社長夫人」に収まることに成功したのです。
一方、久子は、人はいいものの学はなく、
ですので、フツーに、
「地元・金沢へ帰って暮らしていた」
という次第。
ちなみに、佐知子と久子は、お互いの「その後」を知らずにいたため、
「このままであれば」何も問題は起きなかったはずなのですが、
ここで、たまたま、厄介な事態を招いてしまったのが、
禎子(広末)と結婚した「鵜原」という男だったのです。
今は広告代理店に勤務する鵜原は、
終戦直後、立川で警察官を勤めていた時期があったのです。
このときに、当然(?)、売春婦の取り締まりも行った。
そこで、佐知子&久子とは面識があったんですね。
その鵜原が、年月を経て、今は社長夫人の座に収まっている佐知子の前に
現れたわけです。
佐知子は恐れました、鵜原の口から、自分の過去が明らかにされてしまうことを。
(鵜原には、そういうつもりはなかったようですが。)
あの「三人の女性」は、そういう関係にあったわけですね。
直接の関係はない人もいるけれど、
「鵜原という男を通じて」つながりがあったと。
そして、こういう事情をベースに、以下のような話が展開されます。
1.
久子の内縁関係を持っていた鵜原が、見合いで禎子と結婚した
2.
久子と、どう別れようか悩む鵜原に、
佐知子は、「自殺の偽装」を持ちかける
3.
金沢の「自殺の名所」に遺書等を残し、
自殺の痕跡を偽装した鵜原を、佐知子は、その場で突き落とす
(「自殺のフリ」が、一転して、「ホントに死んだことになる」)
4.
鵜原の失踪(ってか、鵜原は死んでいるわけですが)を踏まえ、
禎子、夫の行方を捜す
5.
佐知子、真相に近づきそうな人間を、次々に殺す。
そして、その罪を久子になすりつけようとする。
6.
佐知子、昔のよしみで、久子をうまいこと連れ出し、
これまた、ガケから突き落として殺害。
7.
しかし、禎子に真相を感づかれ、佐知子、冬の海に小船で一人漕ぎ出す。
(事実上の自殺。)
というわけで、事実関係だけ述べれば、
「禎子一人が、生き残った」という結末・・・ということになります。
ラストシーンでは佐知子はナイフで久子を殺し、宗太郎と本多を殺した罪を擦り付けようとしていました。
久子は、自分が死ねば、親友(と思っていた)佐知子が幸せになれるという事で、自分を殺そうとしていた佐知子のために、自ら命を絶ってしまう。
それを見た佐知子に沸き上がってきた「良心の呵責」は、精神を破壊してしまうほど大きなものだったのでしょう。
秘密を知っている友を消して一連の殺人を完結するはずが、意図を察した友がみずから死をえらび、犯人をかばおうとしたことで正気にかえり、冷酷な殺人鬼から常人になり、仕出かしたことの恐ろしさに気づいたと言うことでしょう。
まとめ:ゼロの焦点ネタバレ・ストーリーあらすじ
物語は鵜原禎子の見合い結婚したばかりの夫・鵜原憲一が 仕事の引継ぎの為、以前の勤務地の金沢にでかけたまま行方不明になる
禎子は夫の行方を捜すため金沢に向かいます。そして憲一のかつての得意先の社長夫人である室田佐知子や受付嬢の田沼久子と出会いながら行方を追います。
そうこうするうちに、禎子に続いて金沢に来た憲一の兄が 青酸カリを盛られて殺されるという事件が発生。更に憲一の行方を追っていた同僚の本多までもが殺される。
戦後の混乱期に、室田佐知子と田沼久子は、 進駐軍相手にパン●ンをしてたと言う秘密の過去をもつ。
2人とも戦後に事情があって、そういう仕事をしてたが、 室田佐知子は学がある頭の良い女性だったということもありチャンスをつかみ金沢で社長夫人におさまりました。
この社長が鵜原禎子の夫・憲一の かつての得意先の社長です。
田沼久子は、人はいいものの学はないので、 無難に地元・金沢へ帰って暮らしていました。
受付嬢をしていたのは、田沼久子です。
室田佐知子と田沼久子は、その後の接点はなかったため、 普通であれば、互いに別の人生を歩んで再び会うことはなかったはず。
だけど、行方不明の憲一は今の仕事の前に立川で警察官を勤めていた時期があったため、 室田佐知子と田沼久子を取り締まる立場として接点があります。
そんな人間が、現在では社長夫人としておさまっている 室田佐知子の前に「前歴を知る男」として現れます。
後で分かりますが、憲一は全くそういうつもりはなかったけど室田佐知子の目にはそう映った。
田沼久子と鵜原憲一な金沢で「内縁の関係」にありました。鵜原禎子が知らなかっただけで、二股状態にあった
こうして、鵜原憲一を介して3人の女に接点が生まれた。
田沼久子と鵜原憲一は内縁関係にありながら鵜原憲一は禎子と見合い結婚をする。
そのため、田沼久子とどう別れたらよいかを悩む鵜原に 室田佐知子は「自殺を偽装する」ことを持ちかけ金沢の「自殺の名所」に遺書を残す偽装工作などをする。
この時、室田佐知子は過去を知る憲一を殺すつもりだった。(でも憲一は佐知子が自分が取り締まった女だとは知らなかった)
結局、自殺を偽装しようとした鵜原は室田佐知子に突き落とされ、本当に死んでしまう。
その後、夫・憲一を探して鵜原禎子が金沢に。
室田佐知子は、真相に近づきそうな人間(憲一の兄など)を 次々に殺しその罪を久子になすりつけようと考え言葉巧みに田沼久子を誘い出し、崖から突き落とす。
完璧だったように思えたが禎子に真相を感づかれ、 室田佐知子は冬の海に小船で一人漕ぎ出して行ってしまう(事実上の自殺)
その後は、夫の室田儀作が罪をかぶって全て自分がやったと自供し、警察に連行される途中で警察官から拳銃を奪い自殺します。
女性市長が誕生し、室田佐知子が挨拶をするのですが、その会場内に鵜原禎子が現れ、「マリーーーー」と叫びます。
それを聞いた佐知子は動揺しその場に倒れます。
その後禎子は佐知子と会い、佐知子にビンタ。
佐知子は「憲一さん(禎子の夫)はあなたを本当に愛していたわ」などと話し、その場を去ります。
画面には海原に、女性が横たわって乗っている一艘の船。
字幕で「一週間後、外国船籍のタンカーが、室田佐知子の遺体を発見する。」と出て物語は終りです。
結局、憲一という人間がフラフラとしていたせいで室田佐知子と田沼久子は死に、関係ない人も死にました。
関係者で生き残ったのは禎子ただ1人
憲一は始めから久子と結婚する気は全くなく、金沢にいる間だけの「遊び」のつもりでしたから、いい結婚話があれば当然それに乗ります。
元々結婚するつもりは全然無いので、別れた後に追っかけられたり色々と面倒がないように、始めから久子には偽名を名乗って同棲したということです。